Soma cube の解は、鏡像解と回転解を除くと240通り、鏡像解を含めると480通りあることが実証されています。
実際にやってみると、少し時間をかければ解をひとつ二つ見出すのは決して難しいことではありません。
ところが240通りの解をすべて見出すことは容易ではないことに気が付くはずです。
この記事では鏡像解を含め Soma cube の480通りの解を体系的に求める合理的手法を提示したいと考えています。
480 通りの解を見出す作業は容易ではありませんが、方眼紙と鉛筆を用いて是非トライしてみてください。
とりわけて高齢者には、思考に加えて手と指も使うので脳活にもってこいかと考えています。
Soma cube とは、7種類の要素図形(Soma ピース)を用いて立方体を構成するパズルです。
昨年 (2022年) に木製パズルの一つとして記事にしています。
Figure 1 に7種類の要素図形(Soma ピースとよぶことにします)を示します。
Soma ピースは、ここで示しているようなアルファベットでの名称が与えられています。
この中で $L, T, V, Z$ は、ピースの形状とアルファベットの形状の類似性から命名されています。
いっぽう $P, A, B$ はその由来は不明です。
次に各ピースの対称性、幾何学的形状の特徴を考察してみましょう。
例えばSoma ピース $P$ を抽出して考察しましょう。
Figure 2 をご覧ください。
ピース $P$ は、4個の単位立方体を接合した 3D 図形であることがわかります。
またピース $P$ は、$xy$ 面に鏡像対称面を持つことがわかります。
次にピース $P$ の2平面角に関して観察しましょう。
2平面角とは、立体を構成する二つの平面のなす角度です。
Figure 2 において、$Face \,xy \#1$ と $Face \,zx \#3$ の2平面角が 90 °であることは明瞭です。
このときSoma ピース $P$は90°2平面角を持つと呼ぶことにします。
この90° 2平面角を形成している部分がステップを形成していることもわかります。
ピース $P$ では、$Face \,xy \#2$ と $Face\, yz \#3$ の2平面角および$Face \,yz \#1$ と $Face \,zx \#2$ の2平面角も90°であることがわかります。
このようにピース P では、90°2平面角となる箇所が計3か所あることになります。
Figure 2 Soma ピース $P$ の対称性と幾何学的形状の特徴
それではこれまでの議論を敷衍し、ピース $P$ 以外の他のピースを考察してみましょう。
考察結果をFigure 3 に整理しましたのでをご覧ください。
(1) 単位立方体の数
7種類の Soma ピースの中でピース $P, A, B, Z, L, T$ は 4 個に対して、$V$ だけは 3 個です。
(2) ピースの形状
まず7種類の Soma ピースの中でピース $P, A, B$ は 3D 図形ピースである一方で $T, L, Z, V$ は 2D 図形ピースです。
(3) 対称性
次に対称性を見てみると、 $T$ は鏡像対称面を二つ、$P, Z, L, V$ は 鏡像対称面を一つ持つのに対して、$A, B$ は鏡像対称性がありません。
(4) 90° 2平面角の数量
ピース $P$ が最多の3か所で、$A, B, Z, T$ が2か所 $L, V$ が1か所となっています。
Soma cube の解を求めるわたくし流の手順は、経験的に下記となります。
(1) まずピース $P$ を選択しその位置を決める
(2) 次にピース $Z$ を選択しその位置を決める
(3) 3D 図形ピースである $A, B$ の位置を決める
(4) 2D 図形ピース $T, L, V$ の位置を決める
この手順に関して、論理的に考察してみます。
(1) ピース $P$ の配置
まず初めに3D 図形ピースの中からひとつ選択します。
皆さまでしたらどの Soma ピースを選びますか?
わたしが選択した Soma ピースは、ピース $P$ です。
その理由としては、
[1] ピース $P$ は、直角の2面角を形成する部分が3D 図形ピースの中で最多の3か所もつこと
(ピース $A, B$ もともに2か所です)
[2] ピース $P$ は、鏡像対称性をもつこと
があげられます。
直角の2平面角を形成する部分こそがステップ形状を形成しますので、この数が多いほど他のピースを受容する能力が高く組み上げの発展性が高いことが期待できます。
(2) ピース $Z$ の配置
2番目に選択する Soma ピースとしては、長さが単位立方体の辺長の3倍あるピース $T, Z, L$ の3種類からひとつ選びます。
この3種のピースの中で後まで残しておくとやっかいなものは $Z& ピースであることを経験的に認識しています。
そこでピース $P$ の次にピース $Z$ を選択し配置します。
(3) 3D 図形ピースの配置
次に 3D 図形ピースの $A$ と $B$ のいずれか一方を選択し配置しその後残りのピースを配置します。
(4) 2D 図形ピースの配置
最後に2D 図形ピースの $L, T, V$ を配置します。
それではSoma cube の解の具体例をひとつ提示します。
Figure 4 をご覧ください。
7種類の Soma ピース $P, Z, A, B, T, L,V$ をSoma 立方体の下段、中断、上段での位置を示してSoma 立方体でのSoma ピースの構成を表現しています。
この表示法をここでは上中下段マップと命名します。
はじめはこの表示からSoma ピースの構成を読み取るのは少し戸惑うかもしれませんが、慣れてくるとすぐに認識できるようになります。
この時の Soma 立方体の3D 画像を Figure 5 に示しますので、この表示法をよく理解してみてください。
Figure 4 Soma cube の解の一つの上中下段マップ:Solution #1
左:下段、 中央:中断、 右:上段
Figure 5 Figure 4 のSoma cubeの解の3D画像
左:組み上げ前のSoma ピース 右:組み上げ後
次に Figure 4 の鏡像対称画像を求めます。
この鏡像対称画像は、Soma cube の解の一つとなります。
Figure 6 は、Figure 4 で示した解の鏡像対称解です。
Figure 6 の上の図に示しているように、鏡像対称面は $xy$ 平面です。
Soma ピース $P, Z, T, L$ は鏡像対称であるので位置を変えるだけです。
他方鏡像対称性のないピース $A, B$ は位置を変えるだけでなく、 $A$ ⇒ $B$ および $B$ ⇒ $A$ とピースの変換を伴いますことに注意してください。
ここで上中下段マップを補足する表示手法を提案します。
一定の規則に則り、文字と数字の行列で表しますので文字列表示と命名いたします。
この表示法の規則を Figure 4 の解を参照しながら要約します。
なお下記にて表記する座標 $[x,y]$ をFigure 7 で定義するものを使用します。
Figure 7 座標 $[x,y]$の定義
例えば下記の文字列表示
\[P_{12}*p_{2}[1,3]\]
⇒ピース $P$ は下 (1) 段と中 (2)段に位置し、頂上にある1個の単位立法体は中 (2)段の座標 $[1,3]$ に位置することを表すことにします。
$Rule [1]$ :ピース名の下添え字はそのピースが位置する段を表す。下段、中断、上段を各数字 $1, 2, 3$ で表すことにします。
ここで位置する段数が1段の場合は添え字数は1個のみ、2段の場合は2個、3段にまたがる場合は3個となります。
$Rule [2]$ :ピース名に続いて $*$ 以降でそのピースの特定の単位立法体が位置する段を表す。下段、中断、上段を各数字 $1, 2, 3$ で表す。
この例の場合はピース $P$ の頂上にある1個の単位立法体を特定してます。
また次の文字列表示
\[P_{12}*p_{2}[1,3]-Z_{123}(R)*z_{1}[3,3]\]
⇒ピース $P$ に続いてピース $Z$ は下 (1) 段と中 (2) 段と上段 (3) に位置し ( $Rule [1]$ )、文字$Z$ を左右反転文字で配置し、文字$Z$ の書き始めの単位立法体は下 (1)段の座標 $[3,3]$ に位置することを表します。
$Rule [3]$ :上記の文字列表示の例にあるように$-Z_{123}(R)$の$(R)$で文字$Z$を左右反転文字 ( left-right reversed character )で配置するのを表すことにします。
また$(S)$ で文字$Z$ を標準文字 ( standard character ) で配置するのを表すことにします。
ここで文字$Z$ を配置する仕方標準配置と反転配置について説明します。
文字$Z$ そのまま配置する仕方が標準配置であり、文字$Z$を左右反転させて配置する仕方が反転配置です。
ピース$Z$ を立てた場合は、視線を上方から下方に向けて文字$Z$ が標準か反転か識別することにします。
他方ピース$Z$ を寝かした場合は、視線を奥から手前に向けて文字$Z$ が標準か反転か識別することにします。
このように規定すると、標準配置と反転配置はFigure 8 のような結果となります。
Figure 8 ピース$Z$の配置の仕方:標準配置と反転配置
上段 :標準配置 $Z_{123}(S)$、 下段:反転配置 $Z_{123}(R)$
$Rule [4]$ :$-Z_{123}(R)$の$(R)$に続けて $*$ 以降でそのピースの特定の単位立法体が位置する段を表す。下段、中断、上段を各数字 $1, 2, 3$ で表す。
ピース$Z$の場合は、文字$Z$を書き始めの部分に相当する単位立方体を特定の立方体とすることにします。
Figure 8では文字$Z$を書き始めの部分に相当する単位立方体を表示してますのでご確認ください。
Figure 4, Figure 6 をご覧ください。
Figure 4 の上中下段マップでは、ピース$Z$ は横向きです。
いっぽうFigure 4 の上中下段マップの鏡像対称解であるFigure 6の上中下段マップでは、ピース$Z$ は横向きです。
ここでピース$Z$の向きに関して次のruleを規定します。
$Rule [5]$ :ピース $Z$ は、縦向きではなく横向きに設置する。
この$Rule [5]$は、ピース $Z$ の縦向きの配置は Figure 6 で示すようにピース $Z$ の横向きの配置の鏡像対称解として出現します。
従ってわたし流の解の体系化においては $Solution\#1\sim\#240$ までの240通りの解体系(これを以降 解体系$I$ と呼びます)には所属させずに、 $Solution\#241\sim~\#480$ までの240通りの解体系(これを以降 解体系$II$ と呼びます)に所属することとします。
ここで 解体系$II$ は、解体系$I$ の鏡像対称解です。