2018年06月

2016年末に定年退職しました。 このブログでは、埼玉県比企郡鳩山町を中心にした植生写真を掲載します。 その他、その地誌、趣味の木工、旅行、お酒にも触れます。

ハウンドトゥース チェック (千鳥格子)の中に千鳥が見出されるか?

 前回の記事の中で千鳥格子(ハウンドトゥース チェック ( hound's-tooth check )) の中に日本の伝統的文様の千鳥がわたし流には見出し得ないということを申し上げました。
その後webで調査していましたら、世の中の人の理解の中にどうやら2説あることがわかってきました。
今回の記事ではこれに触れます。

 結論から申しますと、2説とは下記のとおりです。
説A:千鳥の飛ぶ姿
説B:千鳥の足跡
ここで説Aがメジャーな説であり、説Bがマイナーな説となります。

 まずは説Aからご説明申し上げます。
Photo. 1(a)は、wikipedia上のhound's-tooth check [1] に掲載されている文様を示しています。
従いまして、これが英国で生まれた典型的なhound's-tooth checkと考えて良いのではないかと思われます。
ここで十分注意をしなくてはならないことは、この写真が典型的ではありますが、伝統的なhound's-tooth checkでないかもしれないという可能性です。
実はhound's-tooth checkも一通りではなく、異なるパターンもあります。
しかしながら、今回はこのパターンで話を展開します。

Hundtandsrutor

Photo. 1 hound's-tooth check (引用 [1]


 さて千鳥と呼ぶ日本の伝統的模様である千鳥模様は、Photo. 2(a)であると考えていますが、皆様はいかがでしょうか。
そもそものわたし流の疑問は、Photo. 1の中にphoto. 2が見出し得ないのではないかのかということでした。
Photo. 2(b)をご覧ください。
これはとあるアクセサリーショップの商品例で、hound's-tooth checkをモチーフとしたピアス(千鳥ピアス)です。
hound's-tooth checkの中に敢えて千鳥の飛ぶ姿を見出そうとした場合の一つの解であると考えられます。
そもそもチドリとは、鳥類チドリ族チドリ科の鳥の総称です。
Photo. 2(c)チドリ科の鳥の生態写真 [4] を載せました。
この写真の鳥が、チドリ科の何であるのかという特定は[4]ではなされていませんでした。
Photo. 2 (b)(c)を比較しますと、嘴は似ているとはいえませんが飛翔する姿、特に羽の形態は似てなくもないという感想ですが、いかがでしょうか。
2本の風切ばねと尾羽が形成する形状はよく似ているといえます。
この羽の部位をデフォルメすると、Photo. 2 (a)に示す伝統的な千鳥模様にもなり得ます。
従って、嘴の部位を除けば説Aは説得力があります。



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                         (a)                              (b)                              (c)

Photo. 2 (a)日本の伝統的な千鳥模様(引用 [2])、
(b):千鳥のピアス(引用 [3])、(c)チドリ科の野鳥の生態写真(引用 [4]

 次に説Bに移ります、、すなわち足跡説です。
この説は、OKWAVEの千鳥格子Q&A[5]の遣り取りの中にあった説です。
チドリの足跡をwebで調査しました。
Photo.3 (a)をご覧ください。
チドリ科のシロチドリの足跡が、他の鳥類と比較して示してあります。
カルガモとシロチドリ以外の鳥は、すべて4本です。
他方カルガモとシロチドリは3本です。
専門的にはチドリ科の足跡の最大の特徴は、三趾足(さんしそく、英:tridactyl)である点です [7]
実際の足跡は、これぞチドリ科の鳥の足跡というような特定されたものには行き当たりませんでした。
しかし恐らくはチドリ科の鳥の足跡であろう写真はありました。
Photo.3 (b)をご覧ください。
この写真には、前述した三趾足が印象的なものとなっています。
従ってPhoto.3 (b)はチドリ科の鳥の足跡と考えて間違いないと思われます。
Photo.1Photo.3 (b)を比較しますと、説Aで2本の風切ばねと尾羽と想定した形状をこの三趾足とみることができます。
しかしながらPhoto.3 (a) でも (b) でも、各3本の趾は等長です。
他方Photo.1では明らかに真ん中の趾(第3趾)は、他の2本より短く描かれています。
また説Aで嘴と想定した図形は、この説では説明が付きません。
従って、説Bには説少々無理があります。


034_01bird
                                  (a)                                                           (b)
Photo. 3 (a)鳥類の足跡例(引用:[6])、 (b)チドリ科と推定される鳥の足跡(引用:[8]

 以上の考察より、わたし流では説Aがより合理的と考えられます。
しかしながら、説Aにはまだ十分満足されるものになってないような気もします。
どうやら日本には平安時代に千鳥格子と呼ばれるような文様があったという説もあるようです。
現在この辺りを調査しておりますので、何か新しい事実がでてきたら記事にします。



引用サイト

飛騨組子についてー千鳥格子に関しての疑問!

以前から気になっていたことを記事にします。
それは、飛騨組子をなぜ千鳥格子と呼んだのかということに関しての疑問です。
Photo.1 (a)飛騨組子です。
いっぽう、Photo. 1 (b) いわゆる千鳥格子です。
両者の相互関係が、わたし流にはまったく理解不能でした。
この理由からメインの名称として飛騨組子を用い、千鳥格子は通称としてきました。

 いわゆる千鳥格子は、そもそもはスコットランド由来のハウンドトゥース チェック ( hound's-tooth check ) に対してつけられた和名であるというのが一般的理解であると思います。
ハウンドトゥース チェックは、猟犬(hound)の歯をモザイク状にして配列した文様であるとのことです [1]
Photo. 1 (c)に猟犬(hound)の歯を示します。
この全体をモザイク化しデフォルメし45°に傾斜させると、Photo. 1 (b)の文様の黒色の繰り返しの一つの単位になり得そうです。
ここでも素朴な別の疑問として、Photo. 1 (b)のハウンドトゥース チェックを千鳥格子と和訳したかということがあります。
Photo. 1 (b)のハウンドトゥース チェックの中に、和文様での千鳥の姿を見ることがわたし流では不可能です。
この別のさらなる疑問に関しては、話が混乱しますので別途考察することといたします。


IMG_20180331_133920publicdomainq-0002514kcdHounds-Teeth-Tessalations-300x297
                            (a)                                            (b)                           (c)
Photo. 1   (a):飛騨組子、 (b):千鳥格子、(c):Hound's tooth (引用 [1]


 本題に戻ります。
Photo. 1 (a)飛騨組子をなぜ千鳥格子と呼んだのかという疑問です。
わたしのこのブログでの以前の記事(飛騨組子(千鳥格子)を作製!!!)を引用します。

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なおこの飛騨組子のことを千鳥格子と呼んでいます。
下記がそのいわれです[1]

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今から360年前、飛騨の名工が旧軽岡峠(現高山市荘川町)

上り口に地蔵堂を造りました。

その格子戸の組子は、普通では組めない互い違いに組んだものでした。

どのように組んであるか外見ではわからい素晴らしい出来栄を、

昭和46年荘川村(現高山市荘川町)指定文化財に指定し、

これを「千鳥格子」と呼ばれるようになりました。

または、ねじれ組格子とも言われます。
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参考文献

[1]: https://www.hidatakumi.jp/%E9%A3%9B%E9%A8%A8%E7%B5%84%E5%AD%90-%E5%8D%83%E9%B3%A5%E6%A0%BC%E5%AD%90%E3%81%AB%E3%81%A4%E3%81%84%E3%81%A6/

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 上記が引用です。
ここには、千鳥格子と命名したのは飛騨の名工が作った地蔵堂の格子戸の組子を荘川村が指定文化財に指定した際にこの組子を千鳥格子と命名したように記載されています。
この地蔵堂は、現在は高山市指定の有形民俗文化財で千鳥格子御堂という名称になっています [2]
いっぽう岐阜県の公式ホームページ [3] に、概要として大変気になる下記の記事が掲載されていました。

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六廐金山の繁栄した、慶長・元和頃「六廐の了宗寺」を建てた棟梁がこの辻堂を建てたと言われる。
小間返しの格子組で、千鳥になっており、明治の初期に高山の大工が、この技法を知ろうとして格子の一部を壊したと言われている。

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上記「小間返しの格子組で、千鳥になっており」という箇所に重要な情報がありました。
小間返し」「格子組」「千鳥」は、すべて社寺に関係する建築用語です。

●「小間返し」:垂木や格子など細長い部材を連続的に並べるときに、見込寸法と同じ間隔をあけてならべること [4]
●「格子組」:感覚的に、太い材で‘枡組’(正方形)に組むこと [5]
●「千鳥」:互い違いになっている状態、または互い違いに施工すること。ジグザグに歩く千鳥足から来ていると思われる [6]

つまり、荘川村が指定文化財に指定した際に地蔵堂の小間返しの格子の正方形状の組子が”互い違い、すなわち千鳥、になっていた”ので、千鳥状の格子、すなわち千鳥格子と命名したのであると考察されます。
従って命名には、Photo. 1 (b)いわゆる千鳥格子を想定したのではないと考えられます。
これで今までの疑問が解けたような気がします。

 おそらく建築に関係する人の中には千鳥格子という名称からすぐにPhoto. 1 (b)ハウンドトゥース チェックを想起しない人がいるのかもしれません。
わたしは建築には無縁ですので、千鳥格子という名称からすぐにPhoto. 1 (b)ハウンドトゥースを想起しました。

 皆様はいかがでしょうか。
どうも千鳥格子という名称は、あいまいさが漂っています。
厳密に定義したいと思いませんか。
そこで下記ご提案です。

(1)いわゆる千鳥格子つまりPhoto. 1 (b)ハウンドトゥース チェック千鳥格子とよぶことにする。
(2)Photo.1 (a)は、飛騨組子と呼ぶことにする。
次はわたし流の提案です。
(3)あるいはPhoto.1 (a)は、網代文様組子と呼ぶこととする。

 わたし流の提案に関して補足いたします。
日本の伝統的な文様として、網代文様があります。
Photo. 2網代文様を示します。
右側の一崩し網代文様は、Photo.1 (a)飛騨組子そのものです
文様の類別は、数学的には文様群 [10]壁紙群wallpaper group [11] )というカテゴリーで取り扱われます。
そこでは、平面を充填する文様の様式は17種類であるということが定理化されています。
Photo.1 (a)飛騨組子の文様様式は、文様群 c2mm に分類されます。
Photo. 2網代文様は三崩しも一崩しもいずれの文様様式も、文様群 c2mm に分類されます。
従いまして、網代文様組木という名称は、文様群的には同一の様式という一貫性のある合理的な名称であると考えています。
なおPhoto. 1 (b)ハウンドトゥース チェックの文様様式は、上記とは異なる別の文様群 p1m1 に分類されます。
文様群についてはいずれ別の機会に触れたいと考えています。


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Photo.2 網代文様
左:三崩し、 算木崩し (引用:[7]、解説:[8] )、 右:一崩し(引用:[9])

ギャラリー
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nonchan

ブログデビューしたてのビギナーです。 定年リタイア後、ルーティンとして週5のウォーキングと週2のスイミングを課してます。 ブログでは、わたし流の生活から派生した事項を載せるつもりです。 まずは、ウォーキング中に撮影した自宅付近の植生の写真を載せます。 趣味の木工も掲載しようかと考えています。