2020年03月

2016年末に定年退職しました。 このブログでは、埼玉県比企郡鳩山町を中心にした植生写真を掲載します。 その他、その地誌、趣味の木工、旅行、お酒にも触れます。

新型コロナウィルス(COVID-19)の感染者数に関しての考察(その4)ー感染数理モデルの問題点

 考察(その3)において、韓国内の感染者数(感染人口)の時間変化を数理モデル ( SIR モデル ) を適用して数値計算を実施しフィッティングできました。
この考察では、その際の問題点を述べます。
 
 考察(その3)での数値計算の結果として、感染人口の他に健康人口回復人口の時間変化が得られます。
Figure 1 をご覧ください。
ここには、感染人口、健康人口及び回復人口の時間変化が示されています。
図中の黄色カーブ緑色カーブが、それぞれ健康人口回復人口のグラフです。
感染人口グラフである紫色カーブは、埋もれて見えていません。
これは、感染人口グラフのピーク値は8000程度の対して縦軸のスケール上限値が50000000人であり、両社の比は1:6250となっているためです。

 さてこのグラフから、下記事項が認識されます。

(1) 健康人口は50,000,000人から48,300,000人程度まで減少すること
(2) 回復人口は0人から1,700,000人程度まで増加すること
(3) 上記 (1) から、累積感染者数は50,000,000-48,300,000=1,700,000人となること

上記の累積感染者数が1,700,000人となるということは、直感的には考えられない数値です。
Figure 2は、考察(その3)で用いた韓国内の感染データですがこれから累積感染者数を起点から104日後に外装してみると累積感染者数は2万人程度と推定されます。
このように実測値とシミュレーションの結果には、2桁ほどの大きな乖離があります。
この乖離が、今回のシミュレーションの問題点の一つです。

[ 問題点1 ]
健康人口と回復人口の数値が、計測値の推定値と2桁程度の乖離があり合理的でないこと
graph 4
Figure 1  韓国での感染人口健康人口及び回復人口の時間変化:
数理モデル(SIRモデル)でのシミュレーション結果
黄色カーブ健康人口,  緑色カーブ回復人口、紫色カーブ感染人口


 ここで、考察(その3)で採用した初期値とパラメータ値を再度記載します。
この数値計算で使用した初期値とパラメータ値は下記となります。

[1]  $S(0)=50000000=5\times 10^{7} $; (people)
[2]  $I(0)=1$; (people)
[3]  $R(0)=0$; (people)
[4]  $\beta=0.0000002279=2.279\times 10^{-7}$; (/people/day)
[5]  $\gamma=11.2$; (/day)

この初期値の中で、 $S(0)=50000000=5\times 10^{7} $; (people)としましたがこれが合理的でないかもしれません。
韓国では大邱市において集団感染を出しているという事情もあり、韓国の全人口を初期値として採用するのは問題があるかもしれません。

[ 問題点2 ]
$S(0)$の数値が合理的な数値でないこと

 また$\gamma$ の数値として、一般的には感染の感染性期 ( infectious period, 感染者が他者を感染させる可能性のある期間) の逆数程度と言われています [1]
従って、$\gamma=11.2$; (/day)からは感染性期 が1/11.2=0.09day=2hと算定されます。
COVID-19感染性期はまだ確定していないようですが、上記の数値では合理性が無いように感じられます。

[ 問題点3 ]
シミュレーションに採用したパラメータ$\gamma=11.2$; (/day)が合理的な数値でないこと


 以上今回の数理モデル (SIRモデル)による数値計算には問題点が複数あります。
おそらく感染の数理モデルの分野では、これらの問題点を解決する合理的な手法があるのでしょうが、
専門家ではないわたし流としては深追いはせず感染人口にのみ着目してシミュレーションをしていこうと考えています。

新型コロナウィルス(COVID-19)の感染者数に関しての考察(その3)ー韓国感染データと感染数理モデル

 考察(その3)では韓国での感染データに関して触れ、感染数理モデル ( SIRモデル ) で説明ができるかどうかを検討してみます。

 韓国の感染データを取り扱う理由は、感染者の発生数データから見て中国とともに沈静化に向かう傾向がみられるためと必要な感染データ群が整っているからです。
KCDC (Korea Centers for Disease Control and Prevention ) [1] が公表しているデータから感染発生数累積感染者数を視覚化してみたした。
Figure 1 をご覧ください。
感染発生数が3月29日付近をピークにして減少傾向にあり、かつ累積感染者数もその勾配が減少していることがわかります。



COVID-19 Korea 0319
Figure 1 感染者発生数と累積感染者数(韓国):KCDC公表のデータ [1] から作成


  さて考察(その2)で説明しました感染数理モデル ( SIRモデル ) では、変数として3種類すなわち健康人口 $R(t)$、感染人口 $I(t)$、回復人口 $R(t)$ を導入しました。
この中の感染人口 $I(t)$は、Figure 1感染者発生数とは異なる数量概念です。
すなわち、感染人口 $I(t)$ とは時刻 $t$ において感染している人の数と定義されています。
従いまして、時刻 $t$ までに発生した感染者の合計(これは時刻 $t$での累積感染者数となります)から時刻 $t$ までに退院した人の数および時刻 $t$ までに死亡した人の数を差し引いたものとなります。
数式では、下記となります。

\[I(i) \equiv \sum_j^i O(j) -( \sum_j^i Di(j)+ \sum_j^i De(j)  )        ,......[1]\]

ここで、
  $I(i)$:時刻(日数)$i$ での感染人口
  $O(j)$:時刻(日数)$j$ での感染者発生数
  $Di(j)$:時刻(日数)$j$ での退院した人の数
  $De(j)$:時刻(日数)$j$ での死亡した人の数
を表しています。

 KCDCでは、感染者発生数$O(j)$ だけでなく退院した人の数$Di(j)$ 並びに死亡した人の数$De(j)$ のデータが毎日更新されています。
これらデータから感染人口$I(i)$を算定できます。
Figure 2 をご覧ください。
これは、Figure 1感染人口$I(i)$のグラフを追加したものです。
感染人口$I(i)$グラフの特徴は下記事項となります。

(1) 3月6日頃までは感染人口グラフと累積感染者数グラフが接近している
(2) 3月6日頃以降は感染人口グラフと累積感染者数グラフが乖離してくる
(3) 3月13日付近で感染人口グラフは極大を迎える
(4) 3月13日以降は感染人口グラフは低減している

上記事項(3)に関しては、考察(その2)において感染数理モデル (SIR モデル ) における感染人口の時間変化の特徴として記載しています。


COVID-19 Korea 0319-2
Figure 2 感染人口(韓国):KCDC公表のデータ [1] から作成


 次に、考察(その2)において説明しました感染数理モデル (SIR モデル )を適用して、 Figure 2 感染人口グラフをフィティングしてみたいと思います。
Figure 3 をご覧ください。
ここには、Figure 2 での感染者数(感染人口)水色カーブで示されています。
このカーブに感染数理モデル (SIR モデル )を適用してフィティングした数値計算の結果が紫色カーブで示されています。
シミュレーションには、scilabを用いました。
この数値計算で使用した初期値とパラメータ値は下記となります。
[1]  $S(0)=50000000=5\times 10^{7} $; (people)
[2]  $I(0)=1$; (people)
[3]  $R(0)=0$; (people)
[4]  $\beta=0.0000002279=2.279\times 10^{-7}$; (/people/day)
[5]  $\gamma=11.2$; (/day)

[1] に関しては、韓国の人口51845612人の概数を使いました。
[2],[3] は合理的な数値です。
[4] と [5] は、試行錯誤の結果実際値をもっともよく近接する数値となっていると考えています。
なおこの数値計算の結果では、感染者数(感染人口)$I<10 (people)$となるのが95日後、$I<1 (people)$となるのが107日後、すなわちそれぞれ4月23日、5月6日となりますが、いかがでしょうか。


graph 3
Figure 3   韓国での感染人口$I(t)$の時間変化
水色カーブ:KCDCデータからの算定値,  紫色カーブ:数理モデル (SIRモデル ) での計算値
$S(0)=50000000=5\times 10^{7} $, $I(0)=1$, $R(0)=0$
$\beta=0.0000002279=2.279\times 10^{-7}$, $\gamma=11.2$


 この考察(その3)では、ここまでとさせていただきます。
なお次回の考察では、この数値計算の問題点に関して触れてみたいと考えています。


[参照サイト]
[1]:KCDC


新型コロナウィルス(COVID-19)の感染者数に関しての考察(その2)ー感染の数理モデル

感染、伝染に関しての数理モデルとしては、KermackとMcKendrick が1927年に提案した最も簡単な数理モデル(SIRモデル)[1] を採用することとします。
このモデルでは下記の微分方程式で表現されます。

\[\frac{dS}{dt} =- \beta SI\]
\[\frac{dI}{dt} = \beta SI- \gamma I\]
\[\frac{dR}{dt} = \gamma I\]

ここで、変数は$S$、$I$, $R$です。
$S$ は、the number of $susceptible$ individuals の $S$ であり, 感染の可能性のある個体の数量、すなわちまだ感染していない人の数(健康人口と呼ぶことにします)を表しています。
次に $I$ ,は, the number of $infected$ individuals の $I$ であり, 感染した個体の数量、すなわちすでに感染している人の数(感染人口と呼ぶことにします)を表しています。
変数 $R$ は、the number of $recovered$ individuals の $R$ であり、回復した個体の人数(回復人口と呼ぶことにします)を表しています。
なお $R$ には死者を含めます。
いっぽう、$\beta, \gamma>0 $ はパラメータです。
$\beta$ は、感染のしやすさを表すパラメータで感染率と呼ばれます。
$\gamma$ は、回復のしやすさを表すパラメータで回復率と呼ばれます。
上記微分方程式の第1式は、健康人口健康人口 $S$ と感染人口 $I$の積 $SI$ に比例して減少することを表現しています。
第2式は、感染人口健康人口 $S$ と感染人口 $I$ の積 $SI$ に比例して増加するとともに感染人口 $I$ に比例して減少することを表現しています。
第3式は、回復人口感染人口 $I$ に比例して増加することを表現しています。
第1式と2式に非線形項 $SI$ がありますので、この数理モデルは非線形微分方程式となっていますことに注意してください。
非線形であるためこの微分方程式は解析解を求めることはできませんので、数値解析を行う必要があります。

 次に、数値解析の一例を記載します。
数値解析には、scilabを利用しました。
初期値としては、 $S(0)=1000$, $I(0)=1$, $R(0)=0$ としました。
またパラメータ値としては、$\beta=0.0001$, $\gamma=0.07$ としてみました。
Figure 1 をご覧ください。

 ここで、重要なことは以下です。
(1) 感染人口の時間変化は極大値をもち、その形状がピークじょうになること
(2) 健康人口の時間変化は、単調減少であること
(3) 回復人口の時間変化は、単調増加であること
(4) 感染人口、健康人口、回復人口の和は一定であること

事項(4)に関しては、上記微分方程式から導かれます。
すなわち、
\[\frac{dS}{dt} +\frac{dI}{dt}+\frac{dR}{dt} =- \beta SI0+\beta SI- \gamma I+\gamma I=0\]
から明らかです。
次回の考察では、新型コロナウィルスcovid-19に関してこの数理モデルを適用してみることにします。
graph 2
Figure 1  SIRモデルでの数値計算の一例
横軸は日数(日)、縦軸は人口(人)です。
青色カーブ健康人口 $S(t)$ , 赤色カーブ感染人口 $I(t)$, 緑色カーブ回復人口 $R(t)$
$S(0)=1000$, $I(0)=1$, $R(0)=0$
$\beta=0.0001$, $\gamma=0.07$


[1]https://www.maa.org/press/periodicals/loci/joma/the-sir-model-for-spread-of-disease-introduction

新型コロナウィルス(COVID-19)の感染者数に関しての考察

新型コロナウィルス、COVID-19の日本での今後の状況がすべての人の関心事であることは間違いありません。
そこで、この点に関しましてわたし流に考察をすることととしました。
まずは、現時点でのCOVID-19感染状況を把握することが必要です。
感染把握に必要な基本的数量としては、感染者の発生数です。
Figure 1をご覧ください。
厚労省が毎日公表しているCOVID-19感染者の発生数 [1] を視覚化してみました。
日々の感染者発生数を棒グラフで、感染者の累積数を折れ線グラフで時間(日にち)の関数として表現しています。
さてこれらのデータから、今後感染者の発生は増加するのか、減少するのかを予測できるか否かというのが最大の関心事となります。
しかしながら、このグラフでは一向に将来の挙動が読み取れません。
感染という疫学的現象に関して、数理モデルが提案されています。
この数理モデルを適用するとこのデータの中に隠れている情報を引き出すことが可能かもしれません。
わたし流にはその数理モデル適用し隠れている情報を引き出すことが可能かを考察したいと考えています。
今はその数理モデルを学習しています。
数理モデルに関しましては、続編にてご案内申し上げます。


COVID-19 0317

Figure 1  COVID-19の感染者発生数感染者累積数 (厚労省データ [1] から作成)


ギャラリー
  • 新型コロナウィルス(COVID-19)の感染者数に関しての考察(その9-2)ー実効再生産数に変わる単純な感染指標その2
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  • わたし流の庭の植物たち(その7: 6月19日~28日)
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プロフィール

nonchan

ブログデビューしたてのビギナーです。 定年リタイア後、ルーティンとして週5のウォーキングと週2のスイミングを課してます。 ブログでは、わたし流の生活から派生した事項を載せるつもりです。 まずは、ウォーキング中に撮影した自宅付近の植生の写真を載せます。 趣味の木工も掲載しようかと考えています。