考察(その3)において、韓国内の感染者数(感染人口)の時間変化を数理モデル ( SIR モデル ) を適用して数値計算を実施しフィッティングできました。
この考察では、その際の問題点を述べます。
考察(その3)での数値計算の結果として、感染人口の他に健康人口と回復人口の時間変化が得られます。
Figure 1 をご覧ください。
ここには、感染人口、健康人口及び回復人口の時間変化が示されています。
図中の黄色カーブと緑色カーブが、それぞれ健康人口と回復人口のグラフです。
感染人口グラフである紫色カーブは、埋もれて見えていません。
これは、感染人口グラフのピーク値は8000程度の対して縦軸のスケール上限値が50000000人であり、両社の比は1:6250となっているためです。
さてこのグラフから、下記事項が認識されます。
(1) 健康人口は50,000,000人から48,300,000人程度まで減少すること
(2) 回復人口は0人から1,700,000人程度まで増加すること
(3) 上記 (1) から、累積感染者数は50,000,000-48,300,000=1,700,000人となること
上記の累積感染者数が1,700,000人となるということは、直感的には考えられない数値です。
Figure 2は、考察(その3)で用いた韓国内の感染データですがこれから累積感染者数を起点から104日後に外装してみると累積感染者数は2万人程度と推定されます。
このように実測値とシミュレーションの結果には、2桁ほどの大きな乖離があります。
この乖離が、今回のシミュレーションの問題点の一つです。
[ 問題点1 ]
健康人口と回復人口の数値が、計測値の推定値と2桁程度の乖離があり合理的でないこと
Figure 1 韓国での感染人口、健康人口及び回復人口の時間変化:
数理モデル(SIRモデル)でのシミュレーション結果
黄色カーブ:健康人口, 緑色カーブ:回復人口、紫色カーブ:感染人口
ここで、考察(その3)で採用した初期値とパラメータ値を再度記載します。
この数値計算で使用した初期値とパラメータ値は下記となります。
[1] $S(0)=50000000=5\times 10^{7} $; (people)
[2] $I(0)=1$; (people)
[3] $R(0)=0$; (people)[4] $\beta=0.0000002279=2.279\times 10^{-7}$; (/people/day)
[5] $\gamma=11.2$; (/day)
この初期値の中で、 $S(0)=50000000=5\times 10^{7} $; (people)としましたがこれが合理的でないかもしれません。
韓国では大邱市において集団感染を出しているという事情もあり、韓国の全人口を初期値として採用するのは問題があるかもしれません。
[ 問題点2 ]
$S(0)$の数値が合理的な数値でないこと
また$\gamma$ の数値として、一般的には感染の感染性期 ( infectious period, 感染者が他者を感染させる可能性のある期間) の逆数程度と言われています [1] 。
従って、$\gamma=11.2$; (/day)からは感染性期 が1/11.2=0.09day=2hと算定されます。
COVID-19の感染性期はまだ確定していないようですが、上記の数値では合理性が無いように感じられます。
[ 問題点3 ]
シミュレーションに採用したパラメータ$\gamma=11.2$; (/day)が合理的な数値でないこと
以上今回の数理モデル (SIRモデル)による数値計算には問題点が複数あります。
おそらく感染の数理モデルの分野では、これらの問題点を解決する合理的な手法があるのでしょうが、
専門家ではないわたし流としては深追いはせず感染人口にのみ着目してシミュレーションをしていこうと考えています。
専門家ではないわたし流としては深追いはせず感染人口にのみ着目してシミュレーションをしていこうと考えています。