PCR検査実施人数陽性率の相関を考察してみました。
興味ある関係が出てきましたのでご報告させていただきます。
Figure 1をご覧ください。
これは2月以降の厚労省公表のデータに基づいてPCR検査実施人数陽性率を日付の関数で示したものです。
厚労省は、「新型コロナウイルス感染症の現在の状況と厚生労働省の対応について(令和2年m月d日版)」という情報を日ごと公表しています。
この公表値は、令和2年m月d日の0時0分時点での数値です。

 ここでの解析では、この公表値は令和2年m月d日の前日の数値として取り扱っています。
厚労省公表の情報の中で下記の2種類のデータ、「PCR検査実施人数前日比(国内事例)」並びに「陽性者数前日比を使用しています。
なお私の解析では、上記の2種類のデータの名称を各々PCR検査実施人数新規感染者数と言い換えて表現します。

1. PCR検査実施人数前日比(国内事例) ⇒ PCR検査実施人数:$T$
2. 陽性者数前日比 ⇒ 新規感染者数:$P$

この2項目のデータから、下記により陽性率:$R$ を算定します。
\[R = \frac{P}{T}\]
Figure 1 の中の棒グラフが1日ごとのPCR検査実施数:$T$陽性率:$R$ を示しています。
PCR検査実施数の日ごとの揺動が激しく傾向を把握しにくいため、PCR検査実施者数:$T$陽性率:$R$ に対して1週間の移動平均を計した結果がFigure 1 の中の折れ線グラフです。
なおここではPCR検査実施人数1週間の移動平均を移動平均PCR検査実施人数:$\bar{T} $陽性率:$R$ 1週間の移動平均を移動平均陽性率:$\bar{R}$ と表現することにします。

 この移動平均PCR検査実施人数:$\bar{T} $移動平均陽性率:$\bar{R}$ のグラフから次の事項がわかります。

(1) 移動平均PCR検査実施人数:$\bar{T} $ は7月以降増加していること
(2) PCR検査実施人数:$T$直近では1日の実施人数が50000人を超えることもあること
(3) 移動平均陽性率:$\bar{R}$ 移動平均PCR検査実施人数:$\bar{T} $ に追随して6月7月にかけて増加傾向にあること
(4) しかしながら、移動平均陽性率:$\bar{R}$ は7月末から8月にかけて減少する傾向があること
(5) 移動平均陽性率:$\bar{R}$ は7月末ごろピークアウトしていること






figure 1
Figure 1 PCR検査実施人数と陽性率グラフ:日付の関数
棒グラフ:厚労省公表の1日ごとの数値のプロット
折れ線グラフ:1週間の移動平均値のプロット


 Figure 1 から上記の(1)~(5)の事項が認められました。
これらの事項の中で事項 (2) を除くと、移動平均PCR検査実施人数:$\bar{T} $移動平均陽性率:$\bar{R}$の間に相関関係がありそうだということです。
そこで、移動平均陽性率:$\bar{R}$移動平均PCR検査実施人数:$\bar{T} $ の関数としてプロットしてみました。
Figure 2 をご覧ください。
移動平均陽性率の時系列的な変化が追跡できるように、散布点を月ごとに色別しかつ点を線でむすんで表示しています。
このプロットから、上記の事項(1),(3)~(5)がより明確であると認識できます。
上記の事項(1),(3)~(5)をより単純に表現すると、

[1] 移動平均陽性率動平均PCR検査実施者数の関数として表示するとピークを形成する

となります。

 ここで、7月から新規感染者数が増加している現在の状況を感染第2波と呼び、4月にピークアウトした感染状況を感染第1波と呼ぶことにします。
上記事項 [1] は感染第2波に対して成立しているものでした。
しかしながらFigure 2 の3月4月5月のプロットを見ますと、上記事項 [1] は感染第1波に対しても成立しているように考えられます。



figure2

Figure 2 移動平均陽性率:$\bar{R}$ vs. 移動平均PCR検査実施者数:$\bar{T} $

 さて、一般論として感染検査数陽性率を考えてみます。
いま感染検査数を固定して一定と仮定して考察します。

A: 感染が拡大している状況では陽性率は日ごとに増加する
B: 感染が拡大縮小もせず平衡な状況では陽性率は一定値を維持する
C: 感染が縮小している状況では陽性率は日ごとに減少する

と考えられます。

 次に感染検査数を増加した場合を考察してみます。
2通りの状況を設定します。
すなわち、市中感染が支配的な状況とクラスター感染が支配的な状況の2通りです。

 まず、市中感染が支配的な状況では、

A': 感染が拡大している状況では、感染検査数を増加すれば陽性率は増加する
B': 感染が拡大縮小もせず平衡な状況では、感染検査数を増加すれば陽性率は一定値を維持する
C': 感染が縮小している状況では、感染検査数を増加すれば陽性率は減少する

と考えられます。

 いっぽう、クラスター感染が支配的な状況では、

A": 感染が拡大している状況では、感染検査数を増加すれば陽性率は増加することはない
B": 感染が拡大縮小もせず平衡な状況では、感染検査数を増加すれば陽性率は減少する
C": 感染が縮小している状況では、感染検査数を増加すれば陽性率は減少する

と考えられます。

上記考察事項C', B", C"から次の重要な結論が導かれます。

Conc.: 感染検査数を増加して陽性率が減少するのであれば、市中感染かクラスター感染かいずれが支配的な場合でも感染が拡大縮小もせず平衡な状況または感染が縮小している状況、すなわち感染は拡大していない状況である。


 Figure 2 から明白なように、8月になってから移動平均陽性率:$\bar{R}$ 移動平均PCR検査実施人数:$\bar{T} $ に対して、減少傾向にあります。
この事実から上記結論を敷衍しますと、感染第2波は現在拡大していない状況であると考えることができます。