飛騨組子(千鳥格子)の技法の原理の続きです。
前回は、3+3=6本の角材の組手の技法原理を説明しました。
今回は角材の数を増加させた場合すなわち一般化について記載します。

 Figure 1 をご覧ください。
この図は4+4=8本の角材の組手の技法原理を説明している図です。
前回の説明を敷衍すれば、8本のうち6本すなわち横方向のH1,H3,縦方向のV1,V2,V3,V4はすべて同一の断面形状です。
すなわち相欠き深さを板厚の2/3にした角材です。
残りの2本、横方向のH2,H4を相欠き深さを板厚の1/3としています。

 前回の説明から下記のような手順でくみ上げればよいと理解いただけると思います。

(1)V1とV3を机上に置きます。
(2)その上にH1とH3を、相欠きを重ねて接ぎます。
(3)V2,V4をH1,H2の上に相欠きを重ねて接ぎます。
(4)V1とV3を持ち上げ机上から浮かせます。
(5)V1,V2,V3,V4の相欠きに生成された(板厚に相応する長さを持つ)に空き間にH2とH4を横方向から挿入します。
(6)持ち上げていたV1とV3を机上におろし、H2ならびにH4とV1,V2,V3,V4の相欠きのはめ合いをさせれば完成です。


FIGURE 1 飛騨組子(千鳥格子):3+3=6本の場合



 上記の説明を帰納すれば、一般化することができます。
(m+n) 本の角材から構成された飛騨組木(千鳥格子)の場合について記載します。
縦方向の角材がm個、横方向の角材がn個とします。
縦方向角材は、V1,V2,...,Vm-1,Vmとなり、横方向角材はH1,H2,...,Hn-1,Hnとなります。

 m,nの偶奇により4つのケースが考えられます。
ここでは、そのうちの一つのケースである m=even, n=evenの場合、m, n>=2に関して記載します(Case 1)。
FIGURE 2をご覧ください。

 角材の断面形状としては2種類で、(mn-n/2) 個の角材が FIGURE 1 のV1 同様に相欠き深さが板厚の2/3のもの、残る n/2 個が FIGURE 1 の H2 同様に相欠き深さが板厚の1/3のものとなります。
上記手順の記載を拡張すると、下記の手順でくみ上げればよいと理解いただけると思います。

(1)V1,V3,...Vm-1を机上に置きます。
(2)その上にH1,H3,...Hn-1を、相欠きを重ねて接ぎます。
(3)V2,V4,...,VmをH1,H3,...Hn-1の上に相欠きを重ねて接ぎます。
(4)V1,V3,...,Vm-1を持ち上げ机上から浮かせます。
(5)V1,V2,V3,V4,...,Vm-1,Vmの相欠きに生成された(板厚に相応する長さを持つ)空き間に,H2,H4,...,Hnを横方向から挿入します。
(6)持ち上げていたV1,V3,...Vm-1を机上におろし、H2,H4,...,HnとV1,V2,V3,V4の相欠きのはめ合いをさせれば完成です。

他の3つのケースは下記となります。

Case 2: m=even, n=odd
Case 3: m=odd, n=even
Case 4: m=odd, n=odd

以上のケースに関しては、類推してください。


FIGURE 2 飛騨組子(千鳥格子 ):縦 m 本、横 n 本、計(m+n)本の場合





 なお川越高等技術専門校に通行していた時に自由課題として製作した飛騨組子Photo. 1に示しました。
剣留にて縦框に接いだ横桟の上部には一重菱の組子、その下部には縦横14枚から成る飛騨組子を配置してます。
この飛騨格子は、m=n=7の場合に相当します。
上部の軽量な菱と下部の重厚な飛騨組子の対比で、心地よいリズムを生成するように意図しましたが、いかがでしょうか。


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Photo. 1 川越高等技術専門校での自由課題
横桟上部に一重菱の組子、下部には飛騨組子千鳥格子, m=n=7)を配置


なお最新の記事も是非とも参考願います。
 ⇒ 枡格子(その3):四ツ目編み枡格子