木工

2016年末に定年退職しました。 このブログでは、埼玉県比企郡鳩山町を中心にした植生写真を掲載します。 その他、その地誌、趣味の木工、旅行、お酒にも触れます。

Soma cube の解480通りの体系化(その1)

 Soma cube の解は、鏡像解と回転解を除くと240通り、鏡像解を含めると480通りあることが実証されています。
実際にやってみると、少し時間をかければ解をひとつ二つ見出すのは決して難しいことではありません。
ところが240通りの解をすべて見出すことは容易ではないことに気が付くはずです。
この記事では鏡像解を含め Soma cube480通りの解を体系的に求める合理的手法を提示したいと考えています。
480 通りの解を見出す作業は容易ではありませんが、方眼紙と鉛筆を用いて是非トライしてみてください。
とりわけて高齢者には、思考に加えて手と指も使うので脳活にもってこいかと考えています。

 Soma cube とは、7種類の要素図形(Soma ピース)を用いて立方体を構成するパズルです。
昨年 (2022年) に木製パズルの一つとして記事にしています。
Figure 1 に7種類の要素図形(Soma ピースとよぶことにします)を示します。
Soma ピースは、ここで示しているようなアルファベットでの名称が与えられています。
この中で $L, T, V, Z$ は、ピースの形状とアルファベットの形状の類似性から命名されています。
いっぽう $P, A, B$ はその由来は不明です。

Soma cube

Figure 1  7種類のSoma ピース$P, A, B, Z, T, L, V$


 次に各ピースの対称性、幾何学的形状の特徴を考察してみましょう。
例えばSoma ピース $P$ を抽出して考察しましょう。
Figure 2 をご覧ください。
ピース $P$ は、4個の単位立方体を接合した 3D 図形であることがわかります。
またピース $P$ は、$xy$ 面に鏡像対称面を持つことがわかります。
次にピース $P$2平面角に関して観察しましょう。
2平面角とは、立体を構成する二つの平面のなす角度です。
Figure 2 において、$Face \,xy \#1$ と $Face \,zx \#3$ の2平面角が 90 °であることは明瞭です。
このときSoma ピース $P$90°2平面角を持つと呼ぶことにします。
この90° 2平面角を形成している部分がステップを形成していることもわかります。
ピース $P$ では、$Face \,xy \#2$ と $Face\, yz \#3$ の2平面角および$Face \,yz \#1$ と $Face \,zx \#2$ の2平面角も90°であることがわかります。
このようにピース P では、90°2平面角となる箇所が計3か所あることになります。




piece P4

Figure 2  Soma ピース $P$ の対称性と幾何学的形状の特徴


 それではこれまでの議論を敷衍し、ピース $P$ 以外の他のピースを考察してみましょう。
考察結果をFigure 3 に整理しましたのでをご覧ください。

(1) 単位立方体の数
7種類の Soma ピースの中でピース $P, A, B, Z, L, T$ は 4 個に対して、$V$ だけは 3 個です。

(2) ピースの形状
まず7種類の Soma ピースの中でピース $P, A, B$3D 図形ピースである一方で $T, L, Z, V$2D 図形ピースです。

(3) 対称性
次に対称性を見てみると、 $T$鏡像対称面を二つ、$P, Z, L, V$鏡像対称面を一つ持つのに対して、$A, B$鏡像対称性がありません。

(4) 90° 2平面角の数量
ピース $P$ が最多の3か所で、$A, B, Z, T$ が2か所 $L, V$ が1か所となっています。


soma piece 2

Figure 3  Soma ピース  P, A, B, Z, T, L, V の特徴


 Soma cube の解を求めるわたくし流の手順は、経験的に下記となります。
(1) まずピース $P$ を選択しその位置を決める
(2) 次にピース $Z$ を選択しその位置を決める
(3) 3D 図形ピースである $A, B$ の位置を決める
(4) 2D 図形ピース $T, L, V$ の位置を決める

 この手順に関して、論理的に考察してみます。

(1) ピース $P$ の配置
 まず初めに3D 図形ピースの中からひとつ選択します。
皆さまでしたらどの Soma ピースを選びますか?
わたしが選択した Soma ピースは、ピース $P$ です。
その理由としては、
[1] ピース $P$ は、直角の2面角を形成する部分が3D 図形ピースの中で最多の3か所もつこと
ピース $A, B$ もともに2か所です)
[2] ピース $P$ は、鏡像対称性をもつこと
があげられます。
直角の2平面角を形成する部分こそがステップ形状を形成しますので、この数が多いほど他のピースを受容する能力が高く組み上げの発展性が高いことが期待できます。

(2) ピース $Z$ の配置
 2番目に選択する Soma ピースとしては、長さが単位立方体の辺長の3倍あるピース $T, Z, L$ の3種類からひとつ選びます。
この3種のピースの中で後まで残しておくとやっかいなものは $Z& ピースであることを経験的に認識しています。
そこでピース $P$ の次にピース $Z$ を選択し配置します。


(3) 3D 図形ピースの配置
 次に 3D 図形ピース$A$$B$ のいずれか一方を選択し配置しその後残りのピースを配置します。

(4) 2D 図形ピースの配置
 最後に2D 図形ピースの $L, T, V$ を配置します。


 それではSoma cube の解の具体例をひとつ提示します。
Figure 4 をご覧ください。
7種類の Soma ピース $P, Z, A, B, T, L,V$Soma 立方体の下段、中断、上段での位置を示してSoma 立方体でSoma ピースの構成を表現しています。
この表示法をここでは上中下段マップと命名します。
はじめはこの表示からSoma ピースの構成を読み取るのは少し戸惑うかもしれませんが、慣れてくるとすぐに認識できるようになります。
この時の Soma 立方体3D 画像Figure 5 に示しますので、この表示法をよく理解してみてください。

Solution of Soma cuve #1
Figure 4  Soma cube の解の一つの上中下段マップSolution #1
左:下段、 中央:中断、 右:上段


Solution 1 combined


Figure 5  Figure 4Soma cubeの解3D画像
左:組み上げ前のSoma ピース   右:組み上げ後



次に Figure 4鏡像対称画像を求めます。
この鏡像対称画像は、Soma cube の解の一つとなります。
Figure 6 は、Figure 4 で示した解の鏡像対称解です。
Figure 6 の上の図に示しているように、鏡像対称面は $xy$ 平面です。
Soma ピース $P, Z, T, L$鏡像対称であるので位置を変えるだけです。
他方鏡像対称性のないピース $A, B$ は位置を変えるだけでなく、 $A$ ⇒ $B$  および $B$ ⇒ $A$ とピースの変換を伴いますことに注意してください。



Solution of Soma cuve #2
Figure 6  Figure 4 の解(上図:$Solution \,\#1$)の鏡像対称解(下図:$Solution \,\#241$


 ここで上中下段マップを補足する表示手法を提案します。
一定の規則に則り、文字と数字の行列で表しますので文字列表示と命名いたします。
この表示法の規則を Figure 4 の解を参照しながら要約します。
なお下記にて表記する座標 $[x,y]$Figure 7 で定義するものを使用します。

座標


Figure 7  座標 $[x,y]$の定義


例えば下記の文字列表示

\[P_{12}*p_{2}[1,3]\]

ピース $P$ は下 (1) 段と中 (2)段に位置し、頂上にある1個の単位立法体は中 (2)段の座標 $[1,3]$ に位置することを表すことにします。

$Rule [1]$ :ピース名の下添え字はそのピースが位置する段を表す。下段、中断、上段を各数字 $1, 2, 3$ で表すことにします。
ここで位置する段数が1段の場合は添え字数は1個のみ、2段の場合は2個、3段にまたがる場合は3個となります。

$Rule [2]$ :ピース名に続いて $*$ 以降でそのピースの特定の単位立法体が位置する段を表す。下段、中断、上段を各数字 $1, 2, 3$ で表す。
この例の場合はピース $P$ の頂上にある1個の単位立法体を特定してます。

また次の文字列表示

\[P_{12}*p_{2}[1,3]-Z_{123}(R)*z_{1}[3,3]\]

⇒ピース $P$ に続いてピース $Z$ は下 (1) 段と中 (2) 段と上段 (3) に位置し ( $Rule [1]$ )、文字$Z$ を左右反転文字で配置し、文字$Z$ の書き始めの単位立法体は下 (1)段の座標 $[3,3]$ に位置することを表します。

$Rule [3]$ :上記の文字列表示の例にあるように$-Z_{123}(R)$の$(R)$で文字$Z$を左右反転文字 ( left-right reversed character )で配置するのを表すことにします。
また$(S)$ で文字$Z$ を標準文字 ( standard character ) で配置するのを表すことにします。

 ここで文字$Z$ を配置する仕方標準配置反転配置について説明します。
文字$Z$ そのまま配置する仕方が標準配置であり、文字$Z$を左右反転させて配置する仕方が反転配置です。
ピース$Z$ を立てた場合は、視線を上方から下方に向けて文字$Z$ が標準か反転か識別することにします。
他方ピース$Z$ を寝かした場合は、視線を奥から手前に向けて文字$Z$ が標準か反転か識別することにします。
このように規定すると、標準配置反転配置Figure 8 のような結果となります。


Standard and reverse Z
Figure 8 ピース$Z$の配置の仕方:標準配置反転配置
上段 :標準配置 $Z_{123}(S)$、  下段:反転配置 $Z_{123}(R)$

$Rule [4]$ :$-Z_{123}(R)$の$(R)$に続けて $*$ 以降でそのピースの特定の単位立法体が位置する段を表す。下段、中断、上段を各数字 $1, 2, 3$ で表す。
ピース$Z$の場合は、文字$Z$を書き始めの部分に相当する単位立方体を特定の立方体とすることにします。
Figure 8では文字$Z$を書き始めの部分に相当する単位立方体を表示してますのでご確認ください。

 Figure 4, Figure 6 をご覧ください。
Figure 4 の上中下段マップでは、ピース$Z$ は横向きです。
いっぽうFigure 4 の上中下段マップの鏡像対称解であるFigure 6の上中下段マップでは、ピース$Z$ は横向きです。
ここでピース$Z$の向きに関して次のruleを規定します。
$Rule [5]$ :ピース $Z$ は、縦向きではなく横向きに設置する。
この$Rule [5]$は、ピース $Z$ の縦向きの配置は Figure 6 で示すようにピース $Z$ の横向きの配置の鏡像対称解として出現します。
従ってわたし流の解の体系化においては $Solution\#1\sim\#240$ までの240通りの解体系(これを以降 解体系$I$ と呼びます)には所属させずに、 $Solution\#241\sim~\#480$ までの240通りの解体系(これを以降 解体系$II$ と呼びます)に所属することとします。
ここで 解体系$II$ は、解体系$I$ の鏡像対称解です。






Soma cube の解480通りの体系化の提案(その 2 )

 Soma cube の解480通りの体系化の提案(その 2)では、Soma ピース $P$ と $Z$ の配置位置で Soma 解の体系化に関して記述します。
使用する用語は、先の記事「Soma cube の解480通りの体系化の提案(その 1)」で定義したものを多用しますのであいまいな場合は先の記事にあたってください。
なお下記にて表記する座標 $[x,y]$Figure 1 で定義するものを使用します。
座標
Figure 1  配置様式の記載でで使用する座標 $[x,y]$


 それでは進めましょう。
まずは、Soma ピース $P$ を次のように配置し
\[P_{12}*p_{2}[1,3]\]
次にSoma ピース $Z$ を次のように
\[Z_{123}\]
配置する場合を考察します。
この配置の様式を以降は簡略化して配置様式 $P_{12}*p_{2}[1,3]-Z_{123}$ と呼ぶことにします。

 この場合Soma ピース $Z$ の配置の仕方は、7通りとなります。
なおここでご注意願いたい点があります。
文字列表示$Z_{123}*z_{1}[2,1]*z_{2}[1-2,1]$という配置は存在不能です。
その理由は、この配置ですとSoma ピース$P$$Z$との間に閉鎖された単位立方体1個の空間が形成されるからです。
座標表示ですと下段の $[1,1]$ に単位立方体1個の空間ができてしまうためです。
その閉鎖された単位立方体1個の空間を埋める Soma ピースは存在しません。

 Table 1 をご覧ください。
この表には配置様式 \[P_{12}*p_{2}[1,3]-Z_{123}\] の場合のSoma ピース $Z$ の7通りの配置の仕方に関して文字列表示上中下段マップ3D 画像をまとめてあります。
さらに各Soma ピース $Z$ の7通りの配置の各々のSoma cube の解の数量も記載しています。

 Soma cube の解480 通りの解を見出す作業は容易ではありません。
Table 1 に示した解を総和すると 125 通りとなります。
まずは Soma cube を入手 [1] もしくは自作 [2] してみてください。
そして方眼紙と鉛筆を用いて 125 通りの解を是非求めてみてください。
240 通りの解の半分強を見出したこととなります。
とりわけて高齢者には、思考に加えて手と指も使うので脳活にもってこいかと考えています。

 今後記事の続編にて、順次残る配置様式をご案内いたします。
あるいはここで提案した方式のアナロジーにてご自分でトライしていただくのも有りかと考えています。


Table 1   Soma ピース $P$ 次にSoma ピース $Z$ を配置する場合:7通り
配置様式$P_{12}*p_{2}[1,3]-Z_{123}$

P12-Z123-3Dfigure v2

参考
 ⇒わたしが製作したSoma cubeを 通販サイトのCreemaで販売してますので、参考にしてください。
 ⇒Soma cube 用の7種類のSomaピースを作るには単位立方体が27個必要です。
  木製単位立方体を入手し接着剤で張り合わせて7種類のピースを自作できます。
  木製の立方体は、ネット通販あるいはホームセンターなどでいくつかのサイズで市販されています。
  例えば、ネット通販としては下記をご参考ください。
      Amazon  あるいは Temu
















木製パズル(その8):Great Pagoda、$M$ 本組木($M=2n^{2}+1$)続編その2

今回の記事は、「木製パズル(その8):Great Pagoda$M$ 本組木($M=2n^{2}+1$)続編その2」です。
一般化を構造に立ち入って行います。
Pagoda(多層塔)の層数 $n=k$  の場合を検討します。
$k=4,5,...$ とします。

 まず構成パーツの表記に関して復習させていただきます。
51本組木を例にして説明いたします。

Figure 12 をご覧ください。
ここで図中の記号の説明をします。
この記号は、構成パーツの木片の配置に関する標記となっています。
少々面倒くさそうな標記ですが、今後この組木シリーズのパズルを議論するうえで systematic で consistent な標記を導入したほうが良いのではという判断からです。
どうかお付き合い願います。


$Definition$
正方柱形状の構成パーツ木片の底面の正方形の1辺の長さを $2s$ とし $x-y-z$ 座標の中心を51本組木の中心として、
(1) $x$ 軸を $Group I$ の構成パーツの回転軸(円柱部分の軸)とします。

(2) $X(0,a,b)$:正方柱形状の構成パーツ木片の中で $x$ 軸方向に延びた( $x$ 方向が正方形状底面に垂直な方向である)木片で、その中心の $( x, y, z )$ 座標が $( 0, 2as, 2bs)$ であるものを示す。

(2) $Y(c,0,d)$:正方柱形状の構成パーツ木片の中で $y$ 軸方向に延びた( $y$ 方向が正方形状底面に垂直な方向である)木片で、その中心の $( z, x, y )$  座標が $( 2cs, 0, 2ds)$ であるものを示す。

(3) $Z(e,f,0)$:正方柱形状の構成パーツ木片の中で $z$ 軸方向に延びた( $z$ 方向が正方形状底面に垂直な方向である)木片で、その中心の $( x, y, z )$ 座標が $( 2es, 2fs, 0)$ であるものを示す。

  
 例えば、Figure 1 の $Z(0,0, 0)$ は、中心の $( x, y, z )$ 座標が $( 0, 0, 0)$ である$z$ 軸方向に延びた( $z$ 方向が正方形状底面に垂直な方向である)構成パーツ木片を示し、 $Z(0,1,0)$ は、中心の $( x, y, z )$ 座標が $( 0, 2s, 0)$ である$z$ 軸方向に延びた( $z$ 方向が正方形状底面に垂直な方向である)構成パーツ木片を示します。


51-piece step 0
Figure 1  51本組木3D CAD 画像


51-piece step 0-1
Figure 2  51本組木3D CAD 画像: Figure 1 の裏側

 その前に前回の記事の際に51本組木を対象に提示しましたが、構成パーツの $Group$ の類別の systematic 表記を再度繰り返しになりますが提示いたします。
前回の記事「木製パズル(その8):Great Pagoda、$M$ 本組木($M=2n^{2}+1$)続編その1」での表記を少し変更させていただきます。
変更点は、下記二項目です。
(1) 構成パーツの全長の表記をハイフォン $-$ から括弧 $( )$ に変えたこと
(2) $Group\,VI$ ,$Group\,V$に対して全長の表記を括弧 $( )$ で付加したこと

Figure 3 をご覧ください。
$Group\,I$ は変更ありません。
$Group\,VI$ ,$Group\,V$には全長を付加して$Group\,VI(22)$ ,$Group\,V(22)$とします。
$Group\,II-\alpha$, $-\beta$, $-\gamma$, $-\delta$ をそれぞれ構成パーツの全長の数字(単位は $s$)を用いて$Group\,II-6$, $-10$, $-14$, $-18$ という表記でしたが、これを$Group\,II(6)$, $(10)$, $(14)$, $(18)$ と変えることとします。
また$Group\,III$ では 切り欠き A ($Notch\,A$) を2個持つパーツ$Group\,III-\alpha$, $-\beta$, $-\gamma$ をそれぞれ構成パーツの全長の数字(単位は $s$)を用いて$Group\,III-A-10$, $-A-14$, $-A-18$ という表記でしたが、これを$Group\,III-A(10)$, $-A(14)$, $-A(18)$ と変えることとします。
いっぽう$Group\,III$ の 切り欠き 2A ($Notch\,2A$) を2個持つパーツ $Group\,III-i$ を$Group\,III-2A-18$ と いう表記でしたが、これを$Group\,III-2A(18)$ と変えることとします。
この新しい $Group$ 表記法の有効な点は、表記内容によって構成パーツの形状が類推できるということです。
例えば、$Group\,II(22)$ の構成パーツは、 Figure 1 の $Group\,II(18)$ の全長を $18s$ を $22s$ に変えた切り欠き A ($Notch\,A$) を1個持つ形状であると特定できます 。
また$Group\,III-A(26)$ の構成パーツは、 Figure 1 の $Group\,III-A(18)$ の全長を $18s$ を $26s$ に変えた切り欠き A ($Notch\,A$) を2個持つ形状であると特定できます。
さらに$Group\,III-3A(26)$ の構成パーツは、 Figure 1 の $Group\,III-2A(18)$ の全長を $18s$ を $26s$ に変えかつ切り欠き 2A ($Notch\,2A$) の切り欠き長さ $4s$ を $6s$ に変えた切り欠き 3A ($"Notch\,3A"$) を2個持つ形状であると類推できます。 


parts shape definition


Figure 3  構成パーツの $Group$ 分類と各 $Group$の systematic な表記法

 前回の記事「木製パズル(その8):Great Pagoda、$M$ 本組木($M=2n^{2}+1$)続編その1」の公判最後において$n=k$の場合の一般化を記載しました。
その際には構成パーツの数量のみ議論しました。
この記事では構成パーツの形状に関して記載いたします。


$[1]$  $y=0$ 平面
構成パーツの総数:$2k-1$

$\,\,X(0,0,0):\, Group\,V\,(4k+2)$

$\,\,X(0,0,\pm1):\,Group\,II\,(4k-2)$
$\,\,\,\,\,\,\,\vdots\\$
$\,\,X(0,0,\pm\,i):\,Group\,II\,(4(k-i)+2),\,\,\,\,i=1,2,...k-2$
$\,\,\,\,\,\,\,\vdots\\$
$\,\,X(0,0,\pm(k-2)):\,Group\,II\,(10)$
$\,\,X(0,0,-(k-1)):\,Group\,II\,(6)$

$\,\,X(0,0,k-1):\,Group\,I$

$[2]$  $z=0$ 平面
構成パーツの総数:$2k-1$

$\,\,Y(0,0,0):\, Group\,VI\,(4k+2)$

$\,\,Y(\pm1,0,0):\,Group\,III-A\,(4k-2)$
$\,\,\,\,\,\,\,\vdots\\$
$\,\,Y(\pm\,i,0,0):\,Group\,III-A\,(4(k-i)+2),\,\,\,\,i=1,2,...k-2$
$\,\,\,\,\,\,\,\vdots\\$
$\,\,X(\pm(k-2),0,0):\,Group\,III-A\,(10)$

$\,\,X(\pm(k-1),0,0):\,Group\,II\,(6)$

$[3]$  $x=0$ 平面
構成パーツの総数:$2k-1$

$\,\,Z(0,0,0):\, Group\,VI\,(4k+2)$

$\,\,Z(0,\pm1,0):\,Group\,II\,(4k-2)$

$\,\,Z(0,\pm2,0):\,Group\,III-(k-3)A(4k-6)$
$\,\,\,\,\,\,\,\vdots\\$
$\,\,Z(0,\pm\,i,0):\,Group\,III-(k-i-1)A(4k-4i+2),\,\,\,\,i=1,2,...k-2$
$\,\,\,\,\,\,\,\vdots\\$
$\,\,Z(0,\pm(k-2),0):\,Group\,III-A\,(10)$

$\,\,Z(0,\pm(k-1),0):\,Group\,II\,(6)$

$[4]$  $y=1$ 平面
構成パーツの総数:$2k-4$

$\,\,Z(\pm1,1,0):\,Group\,II\,(4k-6)$
$\,\,\,\,\,\,\,\vdots\\$
$\,\,Z(\pm\,i,1,0):\,Group\,II\,(4k-4i-2),\,\,\,\,i=1,2,...k-2$
$\,\,\,\,\,\,\,\vdots\\$
$\,\,Z(\pm(k-2),1,0):\,Group\,II\,(6)$

$[5]$  $y=\,-1$ 平面
構成パーツの総数:$2k-4$

$\,\,Z(\pm1,-1,0):\,Group\,II\,(4k-6)$
$\,\,\,\,\,\,\,\vdots\\$
$\,\,Z(\pm\,i,-1,0):\,Group\,II\,(4k-4i-2),\,\,\,\,i=1,2,...k-2$
$\,\,\,\,\,\,\,\vdots\\$
$\,\,Z(\pm(k-2),-1,0):\,Group\,II\,(6)$

$[6]$ $y=2$ 平面
数量:$2k-6$
$\,\,X(0,2,\pm1):Group\,II\,(4k-10)$
$\,\,\,\,\,\,\,\vdots\\$
$\,\,X(0,2,\pm\,i):Group\,II\,(4k-4i-6)$
$\,\,\,\,\,\,\,\vdots\\$
$\,\,X(0,2,\pm\,(k-3)):Group\,II\,(6)$

$[7]$ $y=\,-2$ 平面
数量:$2k-6$
$\,\,X(0,-2,\pm1):Group\,II\,(4k-10)$
$\,\,\,\,\,\,\,\vdots\\$
$\,\,X(0,-2,\pm\,i):Group\,II\,(4k-4i-6)$
$\,\,\,\,\,\,\,\vdots\\$
$\,\,X(0,-2,\pm\,(k-3)):Group\,II\,(6)$

[8] $y=3$ 平面
数量:$2k-8$
$x$ 軸構成パーツ:$X(0,3,m);\,m=\pm1,\,\pm2, ...,\,\pm(k-4)$

[9] $y=\,-3$ 平面
数量:$2k-8$
$x$ 軸構成パーツ:$X(0,-3,m);\,m=\pm1,\,\pm2, ...,\,\pm(k-4)$

$...............$

[$2k$] $y=k-2$ 平面
数量:$2$
$x$ 軸構成パーツ:$X(0,k-2,m);\,m=\pm1$

[$2k+1$] $y=-(k-2)$ 平面
数量:$2$
$x$ 軸構成パーツ:$X(0,-(k-2),m);\,m=\pm1$

 上記の構成パーツの形状議論ならびに前回までの議論によって、Great Pagoda、$M$ 本組木($M=2n^{2}+1$)の構造に関して完全な一般化を達成できたと考えています。
いかがでしょうか。


木製パズル(その8):Great Pagoda、$M$ 本組木($M=2n^{2}+1$)続編その1

「木製パズル(その8):Great Pagoda、$M$ 本組木($M=2n^{2}+1$)」の続編の記事です。
Pagoda(多重塔)の層数 $n$ が $6$ の際の73本組木の構成パーツを3D CAD 画像で提示し3D CAD 画像Pagoda を構築したいと考えています。
前回の記事「木製パズル(その8):Great Pagoda、$M$ 本組木($M=2n^{2}+1$)」の中の Table 3Table 4 の構成パーツと表記を図解することから始めます。

 その前に前回の記事の際に51本組木を対象に提示しましたが、構成パーツの $Group$ の類別の systematic 表記を再度繰り返しになりますが提示いたします。
Figure 1 をご覧ください。
$Group\,I$ , $Group\,VI$ ,$Group\,V$ は変更ありません。
$Group\,II-\alpha$, $-\beta$, $-\gamma$, $-\delta$ をそれぞれ構成パーツの全長の数字(単位は $s$)を用いて$Group\,II-6$, $-10$, $-14$, $-18$ という表記に変えることとします。
また$Group\,III$ では 切り欠き A ($Notch\,A$) を2個持つパーツを$Group\,III-\alpha$, $-\beta$, $-\gamma$ としてましたが、これらをそれぞれ構成パーツの全長の数字(単位は $s$)を用いて$Group\,III-A-10$, $-A-14$, $-A-18$ と記することにします。
いっぽう$Group\,III$ の 切り欠き 2A ($Notch\,2A$) を2個持つパーツを $Group\,III-i$ としてましたが、これを$Group\,III-2A-18$ と記することにします。
この新しい $Group$ 表記法の有効な点は、表記内容によって構成パーツの形状が類推できるということです。
例えば、$Group\,II-22$ の構成パーツは、 Figure 1 の $Group\,II-18$ の全長を $18s$ を $22s$ に変えた切り欠き A ($Notch\,A$) を1個持つ形状であると特定できます 。
また$Group\,III-A-26$ の構成パーツは、 Figure 1 の $Group\,III-A-18$ の全長を $18s$ を $26s$ に変えた切り欠き A ($Notch\,A$) を2個持つ形状であると特定できます。
さらに$Group\,III-3A-26$ の構成パーツは、 Figure 1 の $Group\,III-2A-18$ の全長を $18s$ を $26s$ に変えかつ切り欠き 2A ($Notch\,2A$) の切り欠き長さ $4s$ を $6s$ に変えた切り欠き 3A ($"Notch\,3A"$) を2個持つ形状であると類推できます。 


51-piece notch3

Figure 1  構成パーツの $Group$ 分類と各 $Group$の systematic な表記法


 これより構造的な議論に戻ります。
前回の記事「木製パズル(その8):Great Pagoda、$M$ 本組木($M=2n^{2}+1$)」の中の Table 3Table 4構成パーツと表記を図解することにしましょう。
$x-y-z$ 座標軸の原点を73本組木の中心において議論します。
73本組木を構成する73本の構成パーツは下記のように類別するとすべて漏らすことなく網羅することが可能であるということがご理解いただけますでしょうか。
なお構成パーツの数量を Table 3Table 4 から抽出してます。

[1] 中心が $y=0$ 平面に存在し $x$ 軸に平行な構成パーツ:11本
[2] 中心が $z=0$ 平面に存在し $y$ 軸に平行な構成パーツ:11本
[3] 中心が $x=0$ 平面に存在し $z$ 軸に平行な構成パーツ:11本
[4] 中心が $y=\pm1$ 平面に存在し $z$ 軸に平行な構成パーツ:8×2=16本
[5] 中心が $y=\pm2$ 平面に存在し $x$ 軸に平行な構成パーツ:6×2=12本
[6] 中心が $y=\pm3$ 平面に存在し $x$ 軸に平行な構成パーツ:4×2=8本
[7] 中心が $y=\pm4$ 平面に存在し $x$ 軸に平行な構成パーツ:2×2=4本

 ここで理解を深めるために、類別ごとに図解してさらに議論を進めます。
Figure 1 をご覧ください。
中心が $y=0$ 平面に存在し $x$ 軸に平行な構成パーツとしては、構成パーツのわたし流表記で表すと$X(0,0,m):m=0,\pm1,\pm2,\pm3,\pm4,\pm5$ の11本となります。
構成パーツの $Group$ としては、$X(0,0,0)$ が $Group \,V$、$X(0,0,5)$ が $Group \,I$、$X(0,0,\pm1)$ が $Group \,II-22$ 、 $X(0,0,\pm2)$ が $Group\, II-18$ 、$X(0,0,\pm3)$ が $Group\, II-14$ 、$X(0,0,\pm4)$ が $Group\, II-10$、$X(0,0,-5)$ が $Group \,II-6$ となります。


y=0 plane
Figure 1  73本組木:中心が $y=0$ 平面に存在し $x$ 軸に平行な構成パーツ:11本


 Figure 2 は、上記の類別 [2] を図解したものです。
中心が 中心が $z=0$ 平面に存在し $y$ 軸に平行な構成パーツとしては、構成パーツのわたし流表記で表すと$Y(m,0,0):m=0,\pm1,\pm2,\pm3,\pm4$,\pm5 の11本となります。
構成パーツの $Group$ としては、$Y(0,0,0)$ が $Group \,VI$、$Y(\pm1,0,0)$ が $Group \,III-A-22$ 、 $Y(\pm2,0,0)$ が $Group\, III-A-18$ 、$Y(\pm3,0,0)$ が $Group\, III-A-14$ 、$Y(\pm4,0,0)$ が $Group \,III-A-10$、$Y(\pm5,0,0)$ が $Group \,II-6$ となります。

z=0 plane
Figure 2  73本組木:中心が $z=0$ 平面に存在し $y$ 軸に平行な構成パーツ:11本

 Figure 3 は、上記の類別 [3] を図解したものです。
中心が $x=0$ 平面に存在し $z$ 軸に平行な構成パーツとしては、構成パーツのわたし流表記で表すと$Z(0,m,0):m=0,\pm1,\pm2,\pm3,\pm4$,\pm5 の11本となります。
構成パーツの $Group$ としては、$Z(0,0,0)$ が $Group \,VI$、$Z(0,\pm1,0)$ が $Group \,II-22$ 、 $Z(0,\pm2,0)$ が $Group\, III-3A-18$ 、$Z(0,\pm3,0)$ が $Group\, III-2A-14$ 、$Z(0,\pm4,0)$ が $Group \,III-A-10$、$Z(0,\pm5,0)$ が $Group \,II-6$となります。

x=0 plane
Figure 3  73本組木:中心が $x=0$ 平面に存在し $z$ 軸に平行な構成パーツ:11本


 Figure 4 は、上記の類別 [4] を図解したものです。
中心が $y=1$ 平面に存在し $z$ 軸に平行な構成パーツとしては、構成パーツのわたし流表記で表すと$Z(m,1,0):m=\pm1,\pm2,\pm3,\pm4$ の8本となります。
なお $Z(0,1,0)$はすでに類別 [3] において抽出されていますので除外してますことに注意してください。
また 中心が $y=-1$ 平面に存在し $z$ 軸に平行な構成パーツ$Z(m,-1,0):m=\pm1,\pm2,\pm3,\pm4$ の8本がFigure 4 と同一の形状を提示してますことはご理解いただけると思いますが、いかがでしょうか。
構成パーツの $Group$ としては、$Z(\pm1,\pm1,0)$ が $Group \,II-18$、$Z(\pm2,\pm1,0)$ が $Group \,II-14$ 、 $Z(\pm3,\pm1,0)$ が $Group \,II-10$、$Z(\pm4,\pm1,0)$ が $Group \,II-6$ となります。

y=1 plane
Figure 4  73本組木:中心が $y=1$ 平面に存在し $z$ 軸に平行な構成パーツ:8本

 Figure 5 は、上記の類別 [5] を図解したものです。
中心が $y=2$ 平面に存在し $x$ 軸に平行な構成パーツとしては、構成パーツのわたし流表記で表すと$X(0,2,m):m=\pm1,\pm2,\pm3$ の6本となります。
なお、中心が $y=-2$ 平面に存在し $z$ 軸に平行な構成パーツ$X(0,-2,m):m=\pm1,\pm2,\pm3$ の6本が Figure 5 と同一の形状を提示してますことはご理解いただけると思いますが、いかがでしょうか。
構成パーツの $Group$ としては、$X(0,\pm2,\pm1)$ が $Group \,II-14$、$X(0,\pm2,\pm2)$ が $Group \,II-10$、$X(0,\pm2,\pm3)$ が $Group \,II-6$ となります。

y=2 plane
Figure 5  73本組木:中心が $y=2$ 平面に存在し $z$ 軸に平行な構成パーツ:6本

 Figure 6 は、上記の類別 [6] を図解したものです。
中心が $y=3$ 平面に存在し $x$ 軸に平行な構成パーツとしては、構成パーツのわたし流表記で表すと$Z(0,3,m):m=\pm1,pm2$ の4本となります。
なお、中心が $y=-3$ 平面に存在し $z$ 軸に平行な構成パーツ$Z(0,-3,m):m=\pm1,\pm2$ の4本が Figure 6 と同一の形状を提示してますことはご理解いただけると思いますが、いかがでしょうか。
構成パーツの $Group$ としては、$X(0,\pm3,\pm2)$ が $Group \,II-10$、$X(0,\pm3,\pm1)$ が $Group \,II-6$ となります。

y=3 plane
Figure 6  73本組木:中心が $y=3$ 平面に存在し $z$ 軸に平行な構成パーツ:4本

 Figure 7 は、上記の類別 [7] を図解したものです。
中心が $y=4$ 平面に存在し $x$ 軸に平行な構成パーツとしては、構成パーツのわたし流表記で表すと$Z(0,4,m):m=\pm1$ の2本となります。
なお、中心が $y=-4$ 平面に存在し $z$ 軸に平行な構成パーツ$Z(0,-4,m):m=\pm1$ の2本が Figure 9 と同一の形状を提示してますことはご理解いただけると思いますが、いかがでしょうか。
構成パーツの $Group$ としては、$X(0,\pm4,\pm1)$ が $Group \,II-6$ となります。

y=4 plane
Figure 6  73本組木:中心が $y=3$ 平面に存在し $z$ 軸に平行な構成パーツ:4本


 以上73本組木を構成する73本の構成パーツを図解してきました。
これら73本の構成パーツを用いて73本組木を構築できることを 3D CAD 動画像を利用して証明しましょう。
まずこれまで議論してきた73本組木を構成する73本の構成パーツを組み上げに適合した配置に再展開します。
Figure 7 をご覧ください。
この配置を初期状態として 73本組木を組み上げることとします。
なおFigure 7 には構成パーツの表記を記入しています。


initial step

Figure 7  73本組木を組み上げるための構成パーツの再配置図解:
組み上げの3D CAD 動画の初期状態です。


 それでは最後に73本組木を組み上げるときの3D CAD 動画Animation 1 に示します。
Figure 1~Figure 6 で示した73本の構成パーツを使用して73本組木を組み上げることが可能であることをご認識いただけると思いますが、いかがでしょうか。
ここまでの議論を帰納することで、一般解であるGreat Pagoda$M$ 本組木($M=2n^{2}+1$)を組み上げるのに必要な $M$ 本の構成パーツの各 $Group$ の数量と形状を割り出し、かつ組み上げる手順を推定することが可能となるとご認識できると思いますが、いかがでしょうか。
これにてGreat Pagoda$M$ 本組木($M=2n^{2}+1$)の一般化を実現したことになります。
ところでわたしが今回製作したのは、$n=1,2,3,4,5$、3本組木9本組木19本組木33本組木51本組木まででした。
今までに実際に製作したGreat Pagoda$M$ 本組木($M=2n^{2}+1$)をインターネットで調査しましたが、$n=6,7,8$、それぞれ73本組木99本組木129本組木を確認しましたことを付言しておきます。




Animation 1 73本組木を組み上げるときの3D CAD 動画

木製パズル(その8):Great Pagoda、$M$ 本組木($M=2n^{2}+1$)

木製パズル(その4)から木製パズル(その7)において、9本組木19本組木33本組木51本組木に関して記載してきました。
今回は総まとめとして、この一連の組木パズルを「木製パズル(その8):Great Pagoda、$M$ 本組木($M=2n^{2}+1$)」として記事にしたいと考えています。

 これら一連の組木の起源に関しては、文献上は明確な記載が見当たりません。
これらの組木の起源に関して調査をしてみると、どうやら日本のようです。
明治時代に箱根組木細工の山中常太郎が創始した山中組木工房で昭和初期までには創出されたものと思われます。
当時日本国内というよりもむしろ海外に輸出されたようです。
四代目 山中成夫作の組木パズルの存在が知られています。
実は英語圏では、これらの一連の組木パズルは Great Pagoda puzzle とか Burr puzzle、あるいはJapanese Crystal puzzle とかの総称で呼ばれています。
はじめの二通りの呼称は木製パズルの著作として著名な Wyatt 著 " Puzzles in wood "(1928) に由来すると思われますが、3番目の呼称になった経緯は不明です。

 木製パズル(その4)から木製パズル(その7)のわたしの記事を複数お読みいただいた方は、これら 4 種類の組木パズルは関連性があるのではないかとお気づきかと考えてます。
いままでには触れませんでしたが、実は回転型四方十字組手もこの Great Pagoda に属してます。
回転型四方十字組手の別名として、3本組木という言い方もありこのことからも Great Pagoda との関係性が示唆されてます。
あらためましてPhoto. 1 に試作した9本組木19本組木33本組木51本組木と今回新規に試作した3本組木も加えて示します。


IMG_20221218_160955

Photo.1  試作した3本組木(前列左)、9本組木(前列右)、19本組木(中央)、
33本組木(後列右)、51本組木(後列左)


 ところで3本組木9本組木19本組木33本組木51本組木構成パーツ数を表す数字の列、すなわち数列

      $a_{n}: 3,  \,\,9,  \,\,19,  \,\,33, \,\, 51, \,\,. . . $

を考察してみましょう。
上記数列 $a_{n}$ の階差数列を $b_{n}=a_{n+1}- a_{n}$ とすると、

      $b_{n}: 6,  \,\,10,  \,\,14,  \,\,18,\,\,...$

となり、初項 6 公差 4 の等差数列を形成していることがわかります。
したがって、

      $b_{n}\,=\, 6\,+\,4(n-1), \,\,\,n=1, \,2, \,...$

よって、
      $$a_{n}\,-\,a_{1}\,= \sum_{k=1}^{n-1} b_{k}\,= \sum_{k=1}^{n-1}2\,+\,4\sum_{k=1}^{n-1}k=2(n\,-\,1)+4\cdot\frac{1}{2}(n-1)n=2n^{2}-2$$

これより、$a_{1}=3$ なので

      $a_{n}=2n^{2}+1,...\,n\in N^{+}$

となります。
数列 $a_{n}$ 自体は、$n$ を $0$ を含めない自然数 $N^{+}$ の要素として存在しています。
しかしながらわたしが試作した組木実態としては、$1\leq n\leq 5$ という制限が存在することにご注意ください。

 ここで上記の数列 $a_{n}$ の添字 $n$ の自然数に対してはいかなる物理的イメージを持てばよいのでしょうか。
わたし流には Pagoda(多層塔)の層数に対応しているものととらえています。
具体的には、例えば 33本組木 ( $n=4$ )および 51本組木 ( $n=5$ )の場合を例にとれば、Figure 1 に示すように 33本組木および 51本組木はそれぞれ4層および5層から形成された Pagoda(多層塔)をイメージできます。
というわけで、以降は上記の $n$ の自然数をわたし流には Pagoda の層数と呼ぶことにします。
以上は表面的な考察ですがこの一連の組木パズル Great Pagoda には統一性、関連性が存在することが示唆されます。
それでは、$n\geq 6$ では一体どうなるのでしょうか。

definition of n
Figure 1  数列 $a_{n}$ の添字 $n$ の自然数に対する物理的イメージ:
Pagoda(多重塔)の層数


 今までの議論では、3本組木 ( $n=1$ )、9本組木 ( $n=2$ )、19本組木 ( $n=3$ )、33本組木 ( $n=4$ )、51本組木 ( $n=5$ ) の構成パーツ数を表す数字の数列を表面的に処理した結果に過ぎません。
どのような形状の構成パーツをどのように組み合わせ組木を構成するかという構造的な議論はしていません。
ということでこれよりは、構造的な議論を展開してみます。
その前に構成パーツの $Group$ の類別の表記をより systematic なものに変えたいと思います。
Figure 2 をご覧ください。
$Group\,I$ , $Group\,VI$ ,$Group\,V$ は変更ありません。
$Group\,II-\alpha$, $-\beta$, $-\gamma$, $-\delta$ をそれぞれ構成パーツの全長の数字(単位は $s$)を用いて$Group\,II-6$, $-10$, $-14$, $-18$ という表記に変えることとします。
また$Group\,III$ では 切り欠き A ($Notch\,A$) を2個持つパーツを$Group\,III-\alpha$, $-\beta$, $-\gamma$ としてましたが、これらをそれぞれ構成パーツの全長の数字(単位は $s$)を用いて$Group\,III-A-10$, $-A-14$, $-A-18$ と記することにします。
いっぽう$Group\,III$ の 切り欠き 2A ($Notch\,2A$) を2個持つパーツを $Group\,III-i$ としてましたが、これを$Group\,III-2A-18$ と記することにします。
この新しい $Group$ 表記法の有効な点は、表記内容によって構成パーツの形状が類推できるということです。
例えば、$Group\,II-22$ の構成パーツは、 Figure 2 の $Group\,II-18$ の全長を $18s$ を $22s$ に変えた切り欠き A ($Notch\,A$) を1個持つ形状であると特定できます 。
また$Group\,III-A-26$ の構成パーツは、 Figure 2 の $Group\,III-A-18$ の全長を $18s$ を $26s$ に変えた切り欠き A ($Notch\,A$) を2個持つ形状であると特定できます。
さらに$Group\,III-3A-26$ の構成パーツは、 Figure 2 の $Group\,III-2A-18$ の全長を $18s$ を $26s$ に変えかつ切り欠き 2A ($Notch\,2A$) の切り欠き長さ $4s$ を $6s$ に変えた切り欠き 3A ($"Notch\,3A"$) を2個持つ形状であると類推できます。 


51-piece notch3

Figure 2  構成パーツの $Group$ 分類と各 $Group$の新奇な表記法


 これより構造的な議論に戻ります。
構成パーツ数の最も多い51本組木を考察対象にしましょう。
Figure 3 51本組木を示します。
$x-y-z$ 座標軸の原点を51本組木の中心において議論します。
51本組木を構成する51本の構成パーツは下記のように類別するとすべて漏らすことなく網羅することが可能であるということがご理解いただけますでしょうか。

[1] 中心が $y=0$ 平面に存在し $x$ 軸に平行な構成パーツ
[2] 中心が $z=0$ 平面に存在し $y$ 軸に平行な構成パーツ
[3] 中心が $x=0$ 平面に存在し $z$ 軸に平行な構成パーツ
[4] 中心が $y=\pm1$ 平面に存在し $z$ 軸に平行な構成パーツ
[5] 中心が $y=\pm2$ 平面に存在し $x$ 軸に平行な構成パーツ
[6] 中心が $y=\pm3$ 平面に存在し $x$ 軸に平行な構成パーツ



51-piece burr
Figure 3  51本組木の構成パーツの平面による類別

 ここで理解を深めるために、類別ごとに図解してさらに議論を進めます。
Figure 4 をご覧ください。
この図は上記の類別 [1] を図解したものです。
中心が $y=0$ 平面に存在し $x$ 軸に平行な構成パーツとしては、構成パーツのわたし流表記で表すと$X(0,0,m):m=0,\pm1,\pm2,\pm3,\pm4$ の9本となります。
構成パーツの $Group$ としては、$X(0,0,0)$ が $Group \,V$、$X(0,0,4)$ が $Group \,I$、$X(0,0,\pm1)$ が $Group \,II-18$ 、 $X(0,0,\pm2)$ が $Group\, II-14$ 、$X(0,0,\pm3)$ が $Group\, II-10$ 、$X(0,0,-4)$ が $Group \,II-6$ となります。

y=0 plane 1

Figure 4  51本組木:中心が $y=0$ 平面に存在し $x$ 軸に平行な構成パーツ:9本


 Figure 5 は、上記の類別 [2] を図解したものです。
中心が 中心が $z=0$ 平面に存在し $y$ 軸に平行な構成パーツとしては、構成パーツのわたし流表記で表すと$Y(m,0,0):m=0,\pm1,\pm2,\pm3,\pm4$ の9本となります。
構成パーツの $Group$ としては、$Y(0,0,0)$ が $Group \,VI$、$Y(\pm1,0,0)$ が $Group \,III-A-18$ 、 $Y(\pm2,0,0)$ が $Group\, III-A-14$ 、$Y(\pm3,0,0)$ が $Group\, III-A-10$ 、$Y(\pm4,0,0)$ が $Group \,II-6$ となります。


z=0 plane

Figure 5  51本組木:中心が $z=0$ 平面に存在し $y$ 軸に平行な構成パーツ:9本


 Figure 6 は、上記の類別 [3] を図解したものです。
中心が $x=0$ 平面に存在し $Z$ 軸に平行な構成パーツとしては、構成パーツのわたし流表記で表すと$Z(0,m,0):m=0,\pm1,\pm2,\pm3,\pm4$ の9本となります。
構成パーツの $Group$ としては、$Z(0,0,0)$ が $Group \,VI$、$Z(0,\pm1,0)$ が $Group \,II-18$ 、 $Z(0,\pm2,0)$ が $Group\, III-2A-14$ 、$Z(0,\pm3,0)$ が $Group\, III-A-10$ 、$Z(0,\pm4,0)$ が $Group \,II-6$ となります。


x=0 plane
Figure 6  51本組木:中心が $x=0$ 平面に存在し $z$ 軸に平行な構成パーツ:9本


 Figure 7 は、上記の類別 [4] を図解したものです。
中心が $y=1$ 平面に存在し $z$ 軸に平行な構成パーツとしては、構成パーツのわたし流表記で表すと$Z(m,1,0):m=\pm1,\pm2,\pm3$ の6本となります。
なお $Z(0,1,0)$はすでに類別 [3] において抽出されていますので除外してますことに注意してください。
また 中心が $y=-1$ 平面に存在し $z$ 軸に平行な構成パーツ$Z(m,-1,0):m=\pm1,\pm2,\pm3$ の6本がFigure 7 と同一の形状を提示してますことはご理解いただけると思いますが、いかがでしょうか。
構成パーツの $Group$ としては、$Z(\pm1,\pm1,0)$ が $Group \,II-14$、$Z(\pm2,\pm1,0)$ が $Group \,II-10$ 、 $Z(\pm3,\pm1,0)$ が $Group \,II-6$ となります。

y=1 plane
Figure 7  51本組木:中心が $y=1$ 平面に存在し $z$ 軸に平行な構成パーツ:6本


 Figure 8 は、上記の類別 [5] を図解したものです。
中心が $y=2$ 平面に存在し $x$ 軸に平行な構成パーツとしては、構成パーツのわたし流表記で表すと$X(0,2,m):m=\pm1,\pm2$ の4本となります。
なお、中心が $y=-2$ 平面に存在し $z$ 軸に平行な構成パーツ$X(0,-2,m):m=\pm1,\pm2$ の4本が Figure 8 と同一の形状を提示してますことはご理解いただけると思いますが、いかがでしょうか。
構成パーツの $Group$ としては、$X(0,\pm2,\pm1)$ が $Group \,II-10$、$X(0,\pm2,\pm2)$ が $Group \,II-6$ となります。

y=2 plane
Figure 8  51本組木:中心が $y=2$ 平面に存在し $x$ 軸に平行な構成パーツ:4本


 Figure 9 は、上記の類別 [6] を図解したものです。
中心が $y=3$ 平面に存在し $x$ 軸に平行な構成パーツとしては、構成パーツのわたし流表記で表すと$Z(0,3,m):m=\pm1$ の2本となります。
なお、中心が $y=-3$ 平面に存在し $z$ 軸に平行な構成パーツ$Z(0,-3,m):m=\pm1$ の4本が Figure 9 と同一の形状を提示してますことはご理解いただけると思いますが、いかがでしょうか。
構成パーツの $Group$ としては、$X(0,\pm3,\pm1)$ が $Group \,II-6$ となります。
y=3 plane
Figure 9  51本組木:中心が $y=3$ 平面に存在し $x$ 軸に平行な構成パーツ:2本


 以上構成パーツの個数を総和すると、

      $9+9+9+(6+4+2)\times2=51$

となり51本組木の構成パーツの数量と一致し、すべて漏れなく計上されていることが確認できます。


 ここで、以降 3本組木9本組木19本組木33本組木51本組木、......という系列の組木パズルを Great Pagoda と総称する呼び方の代わりに $M$ 本組木($M=2n^{2}+1,\,n=1,\,2,\,...$)と呼ぶことにします。
次にただいま51本組木を対象に展開した構造的議論を3本組木9本組木19本組木33本組木すべてを対象に展開してみます。
ここでは具体的議論は割愛しその結果のみを示します。
Table 1Table 2 をご覧ください。
この結果はPagoda(多重塔)の層数 $n$ が $1$ から $5$ に増えるにつれて各平面での構成パーツの表記と数量に規則性が存在することを明瞭に示してます。

 
Table 1  $M$ 本組木($M=2n^{2}+1$)の構成パーツの表記と数量 (その1)
 


Table 2  $M$ 本組木($M=2n^{2}+1$)の構成パーツの表記と数量 (その2):
$x$ 軸に平行な構成パーツを$x$ 軸構成パーツ、$X(x$座標、$y$ 座標、$z$ 座標$)$を $X(x,y,z)$ と略記してます



 ここでPagoda(多重塔)の層数 $n$ が $6$ の場合、すなわち 73本組木を検討してみましょう。
Table 1Table 2 の結果より Table 3Table 4 のように結論できます。
すなわち $n$ が $5$ の場合に対して、各平面の数量が2増加するとともに新たに黄色の項目 $y=\pm4$ の平面が追加されこの項目の数量がそれぞれ2追加されることとなることが理解していただけますでしょうか。


Table 3   73本組木の構成パーツの表記と数量 (その1)



Table 4   73本組木の構成パーツの表記と数量 (その2)


 最後にPagoda(多重塔)の層数 $n$ が $k\geq7$ の一般的な場合、すなわち$M=2k^{2}+1$ 本組木を検討してみましょう。

[1] $y=0$ 平面
数量:$2k-1$
$x$ 軸構成パーツ:$X(0,0,m);\,m=0,\,\pm1,\,\pm2, ...,\,\pm(k-1)$

[2] $z=0$ 平面
数量:$2k-1$
$y$ 軸構成パーツ:$Y(0,0,m);\,m=0,\,\pm1,\,\pm2, ...,\,\pm(k-1)$

[3] $x=0$ 平面
数量:$2k-1$
$z$ 軸構成パーツ:$Z(0,0,m);\,m=0,\,\pm1,\,\pm2, ...,\,\pm(k-1)$

[4] $y=1$ 平面
数量:$2k-4$
$x$ 軸構成パーツ:$Z(m,1,0);\,m=\pm1,\,\pm2, ...,\,\pm(k-2)$

[5] $y=-1$ 平面
数量:$2k-4$
$x$ 軸構成パーツ:$Z(m,-1,0);\,m=\pm1,\,\pm2, ...,\,\pm(k-2)$

[6] $y=2$ 平面
数量:$2k-6$
$x$ 軸構成パーツ:$X(0,2,m);\,m=\pm1,\,\pm2, ...,\,\pm(k-3)$

[7] $y=-2$ 平面
数量:$2k-6$
$x$ 軸構成パーツ:$X(0,-2,m);\,m=\pm1,\,\pm2, ...,\,\pm(k-3)$

[8] $y=3$ 平面
数量:$2k-8$
$x$ 軸構成パーツ:$X(0,3,m);\,m=\pm1,\,\pm2, ...,\,\pm(k-4)$

[9] $y=-3$ 平面
数量:$2k-8$
$x$ 軸構成パーツ:$X(0,-3,m);\,m=\pm1,\,\pm2, ...,\,\pm(k-4)$

$...............$

[$2k$] $y=k-2$ 平面
数量:$2$
$x$ 軸構成パーツ:$X(0,k-2,m);\,m=\pm1$

[$2k+1$] $y=-(k-2)$ 平面
数量:$2$
$x$ 軸構成パーツ:$X(0,-(k-2),m);\,m=\pm1$

となることがご理解いただけるでしょうか。
それではここまでの構造論的議論を受けて$n$ が $k$ の一般的な場合の構成パーツの総和 $S$ を求めてみましょう。

      $S=(2k-1)\times3+2\times((2k-4)+(2k-6)+(2k-8)+...+2)$
      $$=3(2k-1)+2 \sum_{r=1}^{k-2} \big\{2k-(2+2r)\big\}$$
      $$=3(2k-1)+2 \sum_{r=1}^{k-2}2(k-1)-2\times2 \sum_{r=1}^{k-2} r$$
      $$=3(2k-1)+2(k-2)2(k-1)-4\frac{(k-2)(k-2+1)}{2}$$
      $=2k^{2}+1$

となり間違いなく $M$ 本組木($M=2k^{2}+1$)であることが確認できました。

本記事はここで留め置き、「木製パズル(その8):Great Pagoda、$M$ 本組木($M=2n^{2}+1$)続編その1」において Pagoda(多重塔)の層数 $n$ が $6$ の際の73本組木の構成パーツを3D CAD 画像で提示し3D CAD 画像Pagoda を構築したいと考えています。


[ 参考サイト ]
ギャラリー
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nonchan

ブログデビューしたてのビギナーです。 定年リタイア後、ルーティンとして週5のウォーキングと週2のスイミングを課してます。 ブログでは、わたし流の生活から派生した事項を載せるつもりです。 まずは、ウォーキング中に撮影した自宅付近の植生の写真を載せます。 趣味の木工も掲載しようかと考えています。