数学

2016年末に定年退職しました。 このブログでは、埼玉県比企郡鳩山町を中心にした植生写真を掲載します。 その他、その地誌、趣味の木工、旅行、お酒にも触れます。

新型コロナウィルス(COVID-19)の感染者数に関しての考察(その8)ーPCR検査実施数と陽性率

PCR検査実施人数陽性率の相関を考察してみました。
興味ある関係が出てきましたのでご報告させていただきます。
Figure 1をご覧ください。
これは2月以降の厚労省公表のデータに基づいてPCR検査実施人数陽性率を日付の関数で示したものです。
厚労省は、「新型コロナウイルス感染症の現在の状況と厚生労働省の対応について(令和2年m月d日版)」という情報を日ごと公表しています。
この公表値は、令和2年m月d日の0時0分時点での数値です。

 ここでの解析では、この公表値は令和2年m月d日の前日の数値として取り扱っています。
厚労省公表の情報の中で下記の2種類のデータ、「PCR検査実施人数前日比(国内事例)」並びに「陽性者数前日比を使用しています。
なお私の解析では、上記の2種類のデータの名称を各々PCR検査実施人数新規感染者数と言い換えて表現します。

1. PCR検査実施人数前日比(国内事例) ⇒ PCR検査実施人数:$T$
2. 陽性者数前日比 ⇒ 新規感染者数:$P$

この2項目のデータから、下記により陽性率:$R$ を算定します。
\[R = \frac{P}{T}\]
Figure 1 の中の棒グラフが1日ごとのPCR検査実施数:$T$陽性率:$R$ を示しています。
PCR検査実施数の日ごとの揺動が激しく傾向を把握しにくいため、PCR検査実施者数:$T$陽性率:$R$ に対して1週間の移動平均を計した結果がFigure 1 の中の折れ線グラフです。
なおここではPCR検査実施人数1週間の移動平均を移動平均PCR検査実施人数:$\bar{T} $陽性率:$R$ 1週間の移動平均を移動平均陽性率:$\bar{R}$ と表現することにします。

 この移動平均PCR検査実施人数:$\bar{T} $移動平均陽性率:$\bar{R}$ のグラフから次の事項がわかります。

(1) 移動平均PCR検査実施人数:$\bar{T} $ は7月以降増加していること
(2) PCR検査実施人数:$T$直近では1日の実施人数が50000人を超えることもあること
(3) 移動平均陽性率:$\bar{R}$ 移動平均PCR検査実施人数:$\bar{T} $ に追随して6月7月にかけて増加傾向にあること
(4) しかしながら、移動平均陽性率:$\bar{R}$ は7月末から8月にかけて減少する傾向があること
(5) 移動平均陽性率:$\bar{R}$ は7月末ごろピークアウトしていること






figure 1
Figure 1 PCR検査実施人数と陽性率グラフ:日付の関数
棒グラフ:厚労省公表の1日ごとの数値のプロット
折れ線グラフ:1週間の移動平均値のプロット


 Figure 1 から上記の(1)~(5)の事項が認められました。
これらの事項の中で事項 (2) を除くと、移動平均PCR検査実施人数:$\bar{T} $移動平均陽性率:$\bar{R}$の間に相関関係がありそうだということです。
そこで、移動平均陽性率:$\bar{R}$移動平均PCR検査実施人数:$\bar{T} $ の関数としてプロットしてみました。
Figure 2 をご覧ください。
移動平均陽性率の時系列的な変化が追跡できるように、散布点を月ごとに色別しかつ点を線でむすんで表示しています。
このプロットから、上記の事項(1),(3)~(5)がより明確であると認識できます。
上記の事項(1),(3)~(5)をより単純に表現すると、

[1] 移動平均陽性率動平均PCR検査実施者数の関数として表示するとピークを形成する

となります。

 ここで、7月から新規感染者数が増加している現在の状況を感染第2波と呼び、4月にピークアウトした感染状況を感染第1波と呼ぶことにします。
上記事項 [1] は感染第2波に対して成立しているものでした。
しかしながらFigure 2 の3月4月5月のプロットを見ますと、上記事項 [1] は感染第1波に対しても成立しているように考えられます。



figure2

Figure 2 移動平均陽性率:$\bar{R}$ vs. 移動平均PCR検査実施者数:$\bar{T} $

 さて、一般論として感染検査数陽性率を考えてみます。
いま感染検査数を固定して一定と仮定して考察します。

A: 感染が拡大している状況では陽性率は日ごとに増加する
B: 感染が拡大縮小もせず平衡な状況では陽性率は一定値を維持する
C: 感染が縮小している状況では陽性率は日ごとに減少する

と考えられます。

 次に感染検査数を増加した場合を考察してみます。
2通りの状況を設定します。
すなわち、市中感染が支配的な状況とクラスター感染が支配的な状況の2通りです。

 まず、市中感染が支配的な状況では、

A': 感染が拡大している状況では、感染検査数を増加すれば陽性率は増加する
B': 感染が拡大縮小もせず平衡な状況では、感染検査数を増加すれば陽性率は一定値を維持する
C': 感染が縮小している状況では、感染検査数を増加すれば陽性率は減少する

と考えられます。

 いっぽう、クラスター感染が支配的な状況では、

A": 感染が拡大している状況では、感染検査数を増加すれば陽性率は増加することはない
B": 感染が拡大縮小もせず平衡な状況では、感染検査数を増加すれば陽性率は減少する
C": 感染が縮小している状況では、感染検査数を増加すれば陽性率は減少する

と考えられます。

上記考察事項C', B", C"から次の重要な結論が導かれます。

Conc.: 感染検査数を増加して陽性率が減少するのであれば、市中感染かクラスター感染かいずれが支配的な場合でも感染が拡大縮小もせず平衡な状況または感染が縮小している状況、すなわち感染は拡大していない状況である。


 Figure 2 から明白なように、8月になってから移動平均陽性率:$\bar{R}$ 移動平均PCR検査実施人数:$\bar{T} $ に対して、減少傾向にあります。
この事実から上記結論を敷衍しますと、感染第2波は現在拡大していない状況であると考えることができます。







新型コロナウィルス(COVID-19)の感染者数に関しての考察(その7)ー実効再生産数と感染数理モデル

考察(その2)での感染数理モデルから実効再生産数を算定する試みをしてみました。
また日本での感染データを感染数理モデルで解析し実効再生産数を計算してみました
考察(その2)での感染数理モデルを再度記載します。

\[\frac{dS}{dt} =- \beta SI\]
\[\frac{dI}{dt} = \beta SI- \gamma I\]
\[\frac{dR}{dt} = \gamma I\]

ここで、変数は$S$、$I$, $R$です。
$S$ は、the number of $susceptible$ individuals の $S$ であり, 感染の可能性のある個体の数量、すなわちまだ感染していない人の数(健康人口と呼ぶことにします)を表しています。
次に $I$ ,は, the number of $infected$ individuals の $I$ であり, 感染した個体の数量、すなわちすでに感染している人の数(感染人口と呼ぶことにします)を表しています。
変数 $R$ は、the number of $recovered$ individuals の $R$ であり、回復した個体の人数(回復人口と呼ぶことにします)を表しています。
なお $R$ には死者を含めます。

上記微分方程式の第2式から、

 \[\frac{dI}{dt} = \gamma \big(  \frac{ \beta S}{ \gamma }-1 \big) I\]

となります。
ここで、実効再生産数 ( effective reproduction number ) を定義します。
h実効再生産数は普通は$R$と表記しますが、回復人口と識別するためここでは$ERN$と表記します。
\[ERN \equiv    \frac{ \beta S}{ \gamma } ,    ......[1]\]

実効再生産数$ERN$を考察しましょう。
以下の3つのケースがあります。
\[(1)  ERN>1 \Longrightarrow  \frac{dI}{dt}  > 0 \]
\[(2)  ERN=1 \Longrightarrow  \frac{dI}{dt}  = 0 \]
\[(3)   ERN<1 \Longrightarrow  \frac{dI}{dt}  < 0 \]
すなわち、
\[(1) ERN>1 \Longrightarrow「感染人口は増加します」\]
\[(2) ERN=1 \Longrightarrow 「感染人口は極値をとります」\]
\[(3) ERN<1 \Longrightarrow 「感染人口は減少します」\]
$I$は、感染人口ですから初期値は0で次第に増加しその後減少する傾向の関数ですから、上記(2)の場合の$I$の極値とは極大値と考えられます。
この意味でこの数理モデルによる実効再生産数$ERN$の定義は合理的であるといえます。

 さて日本におけるCOVID-19の感染状況を視覚化しました。
Figure 1 をご覧ください。
厚労省公開のデータ [1] を使用して縦棒グラフと折れ線グラフをプロットしています。
(1) 新規感染者数縦棒グラフ
(2) 新規退院者数縦棒グラフ
(3) 新規死亡者数縦棒グラフ
(4) 累積感染者数グラフ
(5) 感染人口グラフ
(6) 感染人口階差グラフ(移動平均処理)
(7) 回復人口グラフ



COVID-19 20200508
Figure 1 日本におけるCOVID-19の感染状況

 ここで最も注目すべき点は、感染人口グラフがピークアウトし減少傾向を見せかけていることです。
感染人口階差グラフ(移動平均処理)は、感染人口グラフの微分を表現しています。
従いまして、感染人口階差グラフ(移動平均処理)の細かな揺動を均して見た際に、5月3日付近で横軸を交差しているとざっくり判断します。
これより感染人口グラフのピークは、5月3日付近と判断します。
Figure 1の開始点は1月15日ですが、これより5月3日は110日後となります。

 さてFigure 1にある感染人口グラフ感染数理モデルを用いてフィッティングすることを試みます。
この際に、感染人口グラフのピークが5月3日(110日後)であることにも留意することとします。
計算の初期値は下記のとおりです。
Figure 2 がその結果です。  

[1]  $S(0)=20000=1.4\times 10^{4} $; (people)
[2]  $I(0)=1$; (people)
[3]  $R(0)=0$; (people)
[4]  $\beta=0.0000644=6.44\times 10^{-5}$; (/people/day)
[5]  $\gamma=0.211968$; (/day)



simulated Japan 1
Figure 2   日本での感染人口$I(t)$の時間変化
水色カーブ:厚労省データからの算定値,  紫色カーブ:数理モデル (SIRモデル ) での計算値
$S(0)=20000=2\times 10^{4} $, $I(0)=1$, $R(0)=0$
$\beta= 0.0000644=6.44\times 10^{-5}$, $\gamma=0.211968$


 次に、Figure 3健康人口感染人口回復人口のシミュレーション結果も示します。
この図には、健康人口から算定した累積感染者数グラフも併せて示してます。
Figure 1の実際値と比較して、回復人口グラフに乖離が見られます。
simulated Japan 1-0

Figure 3   韓国での感染のシミュレーション結果
紫色累積感染者数、 青色健康人口、 緑色回復人口、 赤色感染人口
Figure 2と同一の条件でのシミュレーション結果

 さてこのシミュレーションから、[1]で定義したERNを計算してみました。
Figure 4 をご覧ください。
起点の1月15日(0 day)でのERN=6.0から、5月3日(110 days)でのERN=0.99、5月8日(115 days)でのERN=0.70と単調減少する曲線となっています。
起点から40日後までERN=6を維持していますが、この数値は基本再生産数と考えられます。
このシミュレーションでは、基本再生産数(Basic reproduction number) は、BRN=6.0と判断できます。
なお、COVID-19BRN値としては、1.5~6.49(平均値:3.28)という数値が公表されています[2]


simulated Japan 1-6
Figure 4 日本での実効再生産数 ERN のシミュレーション結果
横軸は1月15日からの経過日数
Figure 2と同一の条件でのシミュレーション結果


[参照サイト]

新型コロナウィルス(COVID-19)の感染者数に関しての考察(その6)ー韓国感染データと感染数理モデル(その2)

 考察(その3)では韓国での感染データに関して触れ、感染数理モデル ( SIRモデル ) で説明ができるかどうかを検討してみました。
それから1ヶ月以上経過しデータも蓄積してきましたので、今回再度トライしてみます。
まずは、Figure 1 をご覧ください。
4月27日現時点での最新データで作成したグラフです。

 ここで基本的データとしては、日付ごとの新規感染者数新規退院者数新規死亡者数の3種類です。
Figure 1において、下記の5種類のグラフが示されています。

(1)縦棒グラフで新規感染者数を日付Dの関数で表示したグラフ(以降、新規感染者の縦棒グラフと呼びます)。
(2)上記新規感染者数を日ごと累積した累計値を日付Dの関数で示したグラフ(累積感染者数グラフと呼びます)
(3)累積感染者数グラフを対数表示したグラフ
(4)新規退院者数新規死亡者数の和を日ごと累積した累計値を日付Dの関数で示したグラフで、これは日付Dでの感染から回復している人口を意味します(回復人口グラフと呼ぶことにします)。
(5)日付Dでの累積感染者数から日付Dでの回復人口を差し引いた人口、これは日付Dでの感染している人口を意味します(感染人口グラフと呼ぶことにします)

この図から、下記事項を確認することができます。

(1) 新規感染者数は3月2日付近でピークを示していること
(2) 累積感染者数グラフは単調増加し現時点では飽和をむかえつつあること
(3) 回復人口グラフも単調増加を示しその勾配を減じていますがまだ飽和していないこと
(4) 感染人口グラフは3月13日付近でピークをしめしていること
(5) 感染人口は現時点でも約1800名ほどいること





Korea
Figure 1 新規感染者数の縦棒累積感染者数回復人口
(韓国)
:KCDC公表のデータ [1] から作成



 さて韓国において現時点での最大の関心事としては、

「感染人口が100人、10人、1人を割るのはいったいいつであるのか」

ということではないでしょうか。

 すでに考察(その3)では感染数理モデルでシミュレートしひとつの回答をしました。
Figure 2 をご覧ください。
その際に使用したパラメータでのシミュレーション結果を示してます。
考察(その3)の際の感染人口グラフに対しては、近接していたのですが、現時点では乖離してしまっています。
今回は新データを基に再度シミュレーションにトライしてみたいと思います。


simulated Korea1-1
Figure 2   韓国での感染人口$I(t)$の時間変化:考察(その3)
水色カーブ:KCDCデータからの算定値,  紫色カーブ:数理モデル (SIRモデル ) での計算値
$S(0)=50000000=5\times 10^{7} $, $I(0)=1$, $R(0)=0$
$\beta=0.0000002279=2.279\times 10^{-7}$, $\gamma=11.2$



 考察(その2)において説明しました感染数理モデル (SIR モデル )を適用して、 Figure 1 感染人口グラフをフィティングしてみたいと思います。
Figure 3 をご覧ください。
ここには、Figure 1 での感染者数(感染人口)水色カーブで示されています。
このカーブに感染数理モデル (SIR モデル )を適用してフィティングした数値計算の結果が紫色カーブで示されています。
シミュレーションには、scilabを用いました。
この数値計算で使用した初期値とパラメータ値は下記となります。

[1]  $S(0)=14000=1.4\times 10^{4} $; (people)
[2]  $I(0)=1$; (people)
[3]  $R(0)=0$; (people)
[4]  $\beta=0.0001863=1.863\times 10^{-4}$; (/people/day)
[5]  $\gamma=0.4416$; (/day)


[2],[3] は合理的な数値です。
[1], [4], [5] は、実際値をもっともよく近接する数値となっていると考えています。
なおこの数値計算の結果では、感染者数(感染人口)$I<100 (people)$となるのが161日後、$I<10 (people)$となるのが214日後、$I<1 (people)$となるのが267日後すなわちそれぞれ6月29日、8月21日、10月13日となりますが、いかがでしょうか。

simulated Korea2

Figure 3   韓国での感染人口$I(t)$の時間変化
水色カーブ:KCDCデータからの算定値,  紫色カーブ:数理モデル (SIRモデル ) での計算値
$S(0)=14000=1.4\times 10^{4} $, $I(0)=1$, $R(0)=0$
$\beta= 0.0001863=1.863\times 10^{-4}$, $\gamma=0.4416$


 このシミュレートでは感染人口グラフの他に、累積感染者グラフ回復人口グラフも合わせて算定できます。
Figure 4 をご覧ください。
Figure 1と比較しますと、累積感染者グラフおよび回復人口グラフはいまだ現実値との乖離が生じていることがわかります。
まだパラメータ数値が最適でないのかもしれません。

simulated Korea2-2
Figure 3   韓国での感染のシミュレーション結果
紫色累積感染者数、 緑色回復人口、 赤色感染人口
Figure 3と同一の条件でのシミュレーション結果


[参照サイト]
[1]:KCDC

新型コロナウィルス(COVID-19)の感染者数に関しての考察(その5)ー経験則

 このレポートでは、日本国内でのCOVID-19感染者数の今後の動向に関して考察したいと思います。
まずは Figure 1 をご覧ください。
この図は日本国内でのCOVID-19累積感染者数の対数を縦軸に取り、日付の関数で示したものです(以降、累積感染者数対数 vs. 日付グラフと呼ぶことにします)。
3月22日以降、4月3日までの累積感染者数をプロットしています。
数値は、厚労省の公示データを参照しています [1]
まずこの対数表示系では、累積感染者数はほぼ直線的に増加していることがわかります。
つまり累積感染者数は、指数関数的な増加を示しています。
図中の直線は、このプロットを直線で回帰分析した結果を示しています。

 この図は、累積感染者数の変化が今後もこの回帰直線を維持するのであれば、4月17日には累積感染者数が10000人に到達するということを示しています。
今日4月5日の時点で累積感染者数10000人を超えている国は15か国ありますが、日本もそのグループに入ることになります。
4月17日までは、あと2週間程度となります。
今日ここでの議論は、今後2週間累積感染者数の変化がこの回帰直線を維持するのかどうかということを世界各国のCOVID-19データから考察したいと考えています。



graph5
Figure 1  日本国内の累積感染者数対数 vs. 日付グラフ
縦軸に累積感染者数(対数表示)を横軸に日付としたグラフ


 考察の手順としては、下記となります。
なお横軸に日付を縦軸に新規感染者数をとった縦棒グラフのことを以降新規感染者数の縦棒グラフとよぶこととします。

[1] 累積感染者数が10000人を超えかつ新規感染者数の縦棒グラフがピークを過ぎている国を特定すること
[2] その国の累積感染者数グラフを解析すること

上記の手順に使用するCOVID-19データベースとして、下記のサイトを参照しました。




手順 [1]
 上記WHOのCOVID-19データベースから、中国、韓国、イタリア、オーストリア、オーストラリアの5か国が新規感染者数の縦棒グラフがピークを迎えてると判断しました。
Figure 2 をご覧ください。
上記5か国の新規感染者数の縦棒グラフです。
これらの国では、新規感染者数のグラフがピークを迎えてると判断してよいものと思います。


chinaaustralia
austria
italy

korea
Figure 2 新規感染者数の縦棒グラフ:引用 [2]
横軸に日付をとっています


 次に上記5か国の累積感染者数グラフを見てみましょう。
Figure 3 をご覧ください。
これは、上記5か国の人口100万人当たりの累積感染者数の対数を日付の関数で示した図です(以降人口100万人当たりの累積感染者数対数 vs. 日付グラフとよぶことにします)。
どの曲線も単調に増加しています。
しかしその勾配は、初めは急峻でその後徐々に減少するという一般的傾向が見られます。
図中各国の累積感染者数のグラフに対して、直線が2本描かれていることにご注目ください。
一つの直線は、人口100万人当たりの累積感染者数が10人を超えてからの比較的急な勾配を表す直線です。
残りの直線は、上記直線のあとの勾配が緩和する付近でプロットを近接する直線です。
上記2本の直線の交点を求めることにします。
その交点が、図面上に国ごとに示されています。
例えば中国では、"China 2/13_12 days"と表記されています。
これは、”その交点の日付が2月13日であり”、かつ”人口100万人当たりの累積感染者数が10人を超えてから12日目である”ちうことを表しています。
人口100万人当たりの累積感染者数が10人を超えてからの日数は、最短が韓国の9日目であり、最長はイタリアの21日目となっています。

累積
Figure 3 人口100万人当たりの累積感染者数対数 vs. 日付グラフ:引用サイト [3]
縦軸は人口100万人当たりの累積感染者数の対数

 上述した交点が何を意味するのかを Figure 2 のグラフ上で確認してみましょう。
Figure 4 をご覧ください。
Figure 2新規感染者数グラフに、交点の日付を表示させました。
新規感染者グラフのピーク付近の位置をほぼ示しているといってよいと思いませんか。


china2
australia2
austria2

italy2
korea2
Figure 4  新規感染者数グラフ:引用 [2]
図中の日付は、Figure 3 で求めた2直線の交点の日付を示しています。


 ここで得られた経験則のポイントを整理しておきます。

経験則 (1) 累積感染者数が10000万人を超えている場合には、人口100万人当たりの累積感染者数が10人を超えた時点から2から3週以内で新規感染者のピークを迎える傾向がある。

経験則 (2) 人口100万人当たりの累積感染者数が10人を超えた時点から2から3週以内では、累積感染者数対数 vs 日付グラフ回帰分析した直線の勾配を維持するケースもあるが、そうでない場合もある。

経験則 (1) は、これまでの説明で納得していただけると思います。
経験則 (2) を捕捉しますと、下記となります。

(2)-1
中国、韓国、オーストラリアでは"人口100万人当たりの累積感染者数が10人を超えた時点から2から3週以内では、累積感染者数対数 vs 日付グラフ回帰分析した直線の勾配を維持するケース"に該当します。
(2)-2
イタリア、オーストリアでは、"人口100万人当たりの累積感染者数が10人を超えた時点から2から3週以内では、累積感染者数対数 vs 日付グラフ回帰分析した直線の勾配を維持するケース"に該当いたしません。

 最後に Figure 1 に戻ります。
人口100万人当たりの累積感染者数が10人を超える時点とは、日本に翻訳すると累積感染者数が10*1.3億/100万=1300人を超えた時点すなわち3月26日となります。
ここから計量して2-3週とは、4月9日から4月16日となります。
ここで経験則(2)-1を適用しますと、Figure 1の回帰直線を4月17日まで外挿しますと累積感染者数は10000人と算定されます。
ここで経験則(2)-2を適用すると、10000人には到達はしないということになります。

 むしろ、大事なことは次の点です。
ここで経験則 (1) を適用すると、4月16日までには新規感染者数グラフがピークを迎える可能性があるということになります。
あくまで可能性にとどまりますが、明るい材料であるかもしれません。


[ 参照サイト ]

新型コロナウィルス(COVID-19)の感染者数に関しての考察(その4)ー感染数理モデルの問題点

 考察(その3)において、韓国内の感染者数(感染人口)の時間変化を数理モデル ( SIR モデル ) を適用して数値計算を実施しフィッティングできました。
この考察では、その際の問題点を述べます。
 
 考察(その3)での数値計算の結果として、感染人口の他に健康人口回復人口の時間変化が得られます。
Figure 1 をご覧ください。
ここには、感染人口、健康人口及び回復人口の時間変化が示されています。
図中の黄色カーブ緑色カーブが、それぞれ健康人口回復人口のグラフです。
感染人口グラフである紫色カーブは、埋もれて見えていません。
これは、感染人口グラフのピーク値は8000程度の対して縦軸のスケール上限値が50000000人であり、両社の比は1:6250となっているためです。

 さてこのグラフから、下記事項が認識されます。

(1) 健康人口は50,000,000人から48,300,000人程度まで減少すること
(2) 回復人口は0人から1,700,000人程度まで増加すること
(3) 上記 (1) から、累積感染者数は50,000,000-48,300,000=1,700,000人となること

上記の累積感染者数が1,700,000人となるということは、直感的には考えられない数値です。
Figure 2は、考察(その3)で用いた韓国内の感染データですがこれから累積感染者数を起点から104日後に外装してみると累積感染者数は2万人程度と推定されます。
このように実測値とシミュレーションの結果には、2桁ほどの大きな乖離があります。
この乖離が、今回のシミュレーションの問題点の一つです。

[ 問題点1 ]
健康人口と回復人口の数値が、計測値の推定値と2桁程度の乖離があり合理的でないこと
graph 4
Figure 1  韓国での感染人口健康人口及び回復人口の時間変化:
数理モデル(SIRモデル)でのシミュレーション結果
黄色カーブ健康人口,  緑色カーブ回復人口、紫色カーブ感染人口


 ここで、考察(その3)で採用した初期値とパラメータ値を再度記載します。
この数値計算で使用した初期値とパラメータ値は下記となります。

[1]  $S(0)=50000000=5\times 10^{7} $; (people)
[2]  $I(0)=1$; (people)
[3]  $R(0)=0$; (people)
[4]  $\beta=0.0000002279=2.279\times 10^{-7}$; (/people/day)
[5]  $\gamma=11.2$; (/day)

この初期値の中で、 $S(0)=50000000=5\times 10^{7} $; (people)としましたがこれが合理的でないかもしれません。
韓国では大邱市において集団感染を出しているという事情もあり、韓国の全人口を初期値として採用するのは問題があるかもしれません。

[ 問題点2 ]
$S(0)$の数値が合理的な数値でないこと

 また$\gamma$ の数値として、一般的には感染の感染性期 ( infectious period, 感染者が他者を感染させる可能性のある期間) の逆数程度と言われています [1]
従って、$\gamma=11.2$; (/day)からは感染性期 が1/11.2=0.09day=2hと算定されます。
COVID-19感染性期はまだ確定していないようですが、上記の数値では合理性が無いように感じられます。

[ 問題点3 ]
シミュレーションに採用したパラメータ$\gamma=11.2$; (/day)が合理的な数値でないこと


 以上今回の数理モデル (SIRモデル)による数値計算には問題点が複数あります。
おそらく感染の数理モデルの分野では、これらの問題点を解決する合理的な手法があるのでしょうが、
専門家ではないわたし流としては深追いはせず感染人口にのみ着目してシミュレーションをしていこうと考えています。

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nonchan

ブログデビューしたてのビギナーです。 定年リタイア後、ルーティンとして週5のウォーキングと週2のスイミングを課してます。 ブログでは、わたし流の生活から派生した事項を載せるつもりです。 まずは、ウォーキング中に撮影した自宅付近の植生の写真を載せます。 趣味の木工も掲載しようかと考えています。