非線形力学系

2016年末に定年退職しました。 このブログでは、埼玉県比企郡鳩山町を中心にした植生写真を掲載します。 その他、その地誌、趣味の木工、旅行、お酒にも触れます。

無限大記号 $ \infty$ を呈する非線形現象 (その2) !!!

無限大記号$ \infty$を呈する非線形現象の続きです。
先に非強制Duffing振動子が 、無限大記号$ \infty$を呈する物理現象であることを申し上げました。
今回は、天体力学上の事象をあげます。

 よく知られていますように2つの質点が重力で相互作用する系での力学的運動に関する問題すなわち2体問題は、一般的な解析解を求めることができます [1]
しかしながら3つの質点が重力で相互作用する系での力学的運動に関する問題すなわち3体問題は、一般的には解析解がありません。
このことは、1890年にPoincaréによって導かれました。
しかしながら特別な場合は、例外的に解が得られています。
先ごろまでにその例外は1例しか知られていませんでした。
それは、2体が円軌道をしかつその2体に比較し他の1体が質量が小であるという仮定をした場合で、いわゆる円制限3体問題の場合のみでした。
これが有名な Lagrange [2] と呼ばれるもので、 Lagrangeの1772年の論文です。
この発見から実に221年ぶりに1993年サンタフェ研究所Mooreが3質点の質量が等しい場合、8の字状の解 (figure-8 solution) 8の字軌道(figure-8 orbit)があることを見だしました。
FIGURE 1Mooreのホームペイジ [3] からコピーした動画を示します。
いかがですか、この質点の軌道形状は無限大記号$ \infty$と類似していますね。
重力による相互作用ですから、運動方程式は基本的には質点間の距離の2乗に反比例するような非線形の微分方程式になっていることはすぐに理解できます。
従いまして、この8の字軌道非線形事象といえます。
先の非強制Duffing振動子非線形事象であったことと共通しています。
loop
FIGURE 1 8の字軌道:引用 Moore [3]



参照サイト
[1]http://www.ep.sci.hokudai.ac.jp/~ssd/doc/SEC02/section2.pdf
[2]https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%A9%E3%82%B0%E3%83%A9%E3%83%B3%E3%82%B8%E3%83%A5%E7%82%B9
[3]http://tuvalu.santafe.edu/~moore/gallery.html





無限大記号$ \infty$を呈する非線形現象 (その1) !!!

数学上で無限大を表す記号である $ \infty$ について、調査を継続しています。
なかなか興味あることが判明してきています。
この記号 $ \infty$ の由来に関しては、前回説明をいたしました。
今回は由来ではなく、この記号と類似の形状を呈するような現象が自然界に何かあるかというテーマで報告します。
結論から言いますと、実は2つの自然現象を見出しました。
両者ともに非線形の物理的現象です。
今日はそのうちの一つをご紹介します。

 Duffing振動子 (Duffing oscilator) という非線形力学上の有名な事象があります ( 参照:[1] )。
Duffingはドイツのベルリン工科大学で振動に関する研究に従事し、1918年にDuffing方程式となずけられる振動に関する論文をだしています [2]
Duffing振動子は例えFIGURE 1に示すような振動系において鉄製の竿(beam)の先端の振動をよく記述します。
この竿は片端が剛体フレームに固定され、他端はフリーですが2個の磁石から磁力をうけています。
また剛体フレームは、水平方向の周期的外力を受けています。

 まず初めに水平方向の周期的外力が無い場合を考えてみます。
直感的には竿の弾性復元力と磁尺による引力との平衡点があるだろうと考えられます。
平衡点は図中の破線(竿の固定箇所から鉛直下方にのびた線)の左右に2か所あることもわかります。
竿はその平衡点を往復する振動運動をするであろうと推定されます。
いっぽう水平方向の周期的外力が有る場合は、その周期に応じ竿はかなり複雑な振動運動をするであろうと推定されます。
以降、ここでは水平方向の周期的外力の無い場合を考察することにします。
Duffing-MagnetelasticBeam
FIGURE 1   Duffing振動子で記述される物理事象:引用[1]

竿(beam)の先端の変位を $x$ とし水平方向の外力が無い場合の運動方程式を書くと次となります。
 \[
m\frac{d^2x}{dt^2} = \alpha x- \beta x^3- \delta \frac{dx}{dt}\tag{1}
\]
ここで、$m$は物体の質量、$ \alpha, \beta, \delta>0$ は定数です。
右辺の第1、2項が竿の弾性力と磁力を合わせた合力を第3項が空気抵抗による減衰を表現しています。
なお(1) 式は外力がない場合ですがこれを非強制Duffing方程式とよんでいます。
この物理的表式は、数学的には下記に簡単化されます。
 \[
 \ddot{x}=x-x^3-\delta\dot{x}\tag{2}
\]
時間微分をdotで表します。
例えば、$\frac{d^2x}{dt^2}$の代わりに$ \ddot{x}$などを使って表しています。
[2]は、$-x^3-\delta\dot{x}$を含みますので非線形で、2階常微分非線形方程式という様式となります。

 解は解析的には解けませんので、数値計算で求めます。
常套手段として変数を増やして、階数を落とし連立1階常微分非線形方程式とします。
 \[
 \dot{x}=y\\
 \dot{y}=x-x^3- \delta y\tag{3}   
\]
Scilab [3] を利用した数値計算結果の一例をFIGURE 2に示します。
この図の横軸と縦軸は、それぞれ$x$と$y$であり、この2次元面は位相空間と呼ばれます。
これは、$\delta=0$ 、すなわち空気抵抗による減衰が無い場合の計算例です。
なお初期値を$(x_{0},y_{0})=(0.01,0.01)$としています(図中では座標を×印で示しています)。
まさしく無限大記号そのもののように見えます。
力学系ではこのような位相空間内での表現を軌跡 (trajectry)、軌道(orbit)という表現をします。
これを起点としFIGURE 2で示した矢印の向きに順次運動し原点の周囲を周遊する周期軌道を呈します。
従いまして、無限大記号の形状はDuffing振動子の外力が無く減衰も無い場合の位相空間での軌道と極めて類似しているといえます。
FIGURE 1の物理系に立ち返りますと、外力が無い場合竿の弾性と磁石の引力との平衡点が図中の破線(竿の固定点からの鉛直線)の左右に2点あり、減衰がないためその平衡点を往復するという描像となります。
これは、直感と一致いたします。

スクリーンショット (6)
FIGURE 2  外力の無いDuffing振動子の数値計算例:$\delta=0,  (x_{0},y_{0})=(0.01,0.01)$

 初期値を変えると軌道の形状がどう変わるるのかを見たのがFIGURE 3です。
FIGURE 2 では初期値を$(x_{0},y_{0})=(0.01,0.01)$としましたが、初期値を$(x_{0},y_{0})=(0.1,0), (0.1,0.1), (0.1,0.2), (0., 0.3), (0.1, 0.4), (0.1, 0.5)$とした際の計算結果をFIGURE 3に示しました。
初期値が$(x_{0},y_{0})=(0.1,0.1), (0.1,0.2), (0.1, 0.3), (0.1, 0.4), (0.1, 0.5)$の場合はすべて、FIGURE 2同様の原点周囲を周遊する周期軌道となります。
しかしながら初期値を$(x_{0},y_{0})=(0.1,0)$の場合の軌道は、原点周囲を周遊する軌道となっていません。
実はこの場合は、点$(x,y)=(1,0)$を周遊する周期軌道となります。
初期値により、点$(x,y)=(-1,0)$を周遊する周期軌道も出現します。
まとめますと、初期値に依存して原点を周遊する軌道あるいは点$(x,y)=(1,0)$または点$(x,y)=(-1,0)$を周遊する軌道となります。
いずれの場合も、共通しているのは周期軌道となることです。
物理系に立ち返りますと、初期値の$(x_{0},y_{0})$の$y_{0}$の値が小の場合は$x_{0}$の数値により前述した2つの平衡点のうちいずれかの周囲で振動することとなり、他方$y_{0}$の値が大の場合は2つの平衡点を往復する振動となる描像となります。
これも直感とよく一致いたします。
スクリーンショット (5)
FIGURE 3  外力の無いDuffing振動子の数値計算例
$\delta=0$,  初期値:$(x_{0},y_{0})=(0.1,0), (0.1,0.1), (0.1,0.2), (0.1, 0.3), (0.1, 0.4), (0.1, 0.5)$

最後に減衰がある場合、すなわち $\delta \neq 0$ の一例をFIGURE 4に示します。
ここでは、$\delta=0.003$、 初期値:$(x_{0},y_{0})=(0.1,0.2)$としています。
この場合の軌道は原点周囲を1周した後、左側の平衡点に近接していく振動運動をすると解釈できます。
この図では数値計算時の時間を有限としていますから途中までの軌道は中途となっており、時間を大とすればいずれ平衡点で停止するものと考えられます。
物理増としては、減衰があればいずれ平衡点に近接し停止するであろうという直感と一致します。

スクリーンショット (7)

FIGURE 4  外力の無いDuffing振動子の数値計算例
$\delta=0.003$,  初期値:$(x_{0},y_{0})= (0.1,0.2)$

 今回はここまでとし、他のもうひとつの現象に関しては別途記載します。


参考サイト
[1]: http://www.scholarpedia.org/article/Duffing_oscillator
[2]: http://www.atomosyd.net/spip.php?article97
[3]: https://ja.wikipedia.org/wiki/Scilab

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ブログデビューしたてのビギナーです。 定年リタイア後、ルーティンとして週5のウォーキングと週2のスイミングを課してます。 ブログでは、わたし流の生活から派生した事項を載せるつもりです。 まずは、ウォーキング中に撮影した自宅付近の植生の写真を載せます。 趣味の木工も掲載しようかと考えています。