以前から気になっていたことを記事にします。
それは、飛騨組子をなぜ千鳥格子と呼んだのかということに関しての疑問です。
Photo.1 (a)飛騨組子です。
いっぽう、Photo. 1 (b) いわゆる千鳥格子です。
両者の相互関係が、わたし流にはまったく理解不能でした。
この理由からメインの名称として飛騨組子を用い、千鳥格子は通称としてきました。

 いわゆる千鳥格子は、そもそもはスコットランド由来のハウンドトゥース チェック ( hound's-tooth check ) に対してつけられた和名であるというのが一般的理解であると思います。
ハウンドトゥース チェックは、猟犬(hound)の歯をモザイク状にして配列した文様であるとのことです [1]
Photo. 1 (c)に猟犬(hound)の歯を示します。
この全体をモザイク化しデフォルメし45°に傾斜させると、Photo. 1 (b)の文様の黒色の繰り返しの一つの単位になり得そうです。
ここでも素朴な別の疑問として、Photo. 1 (b)のハウンドトゥース チェックを千鳥格子と和訳したかということがあります。
Photo. 1 (b)のハウンドトゥース チェックの中に、和文様での千鳥の姿を見ることがわたし流では不可能です。
この別のさらなる疑問に関しては、話が混乱しますので別途考察することといたします。


IMG_20180331_133920publicdomainq-0002514kcdHounds-Teeth-Tessalations-300x297
                            (a)                                            (b)                           (c)
Photo. 1   (a):飛騨組子、 (b):千鳥格子、(c):Hound's tooth (引用 [1]


 本題に戻ります。
Photo. 1 (a)飛騨組子をなぜ千鳥格子と呼んだのかという疑問です。
わたしのこのブログでの以前の記事(飛騨組子(千鳥格子)を作製!!!)を引用します。

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なおこの飛騨組子のことを千鳥格子と呼んでいます。
下記がそのいわれです[1]

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今から360年前、飛騨の名工が旧軽岡峠(現高山市荘川町)

上り口に地蔵堂を造りました。

その格子戸の組子は、普通では組めない互い違いに組んだものでした。

どのように組んであるか外見ではわからい素晴らしい出来栄を、

昭和46年荘川村(現高山市荘川町)指定文化財に指定し、

これを「千鳥格子」と呼ばれるようになりました。

または、ねじれ組格子とも言われます。
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参考文献

[1]: https://www.hidatakumi.jp/%E9%A3%9B%E9%A8%A8%E7%B5%84%E5%AD%90-%E5%8D%83%E9%B3%A5%E6%A0%BC%E5%AD%90%E3%81%AB%E3%81%A4%E3%81%84%E3%81%A6/

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 上記が引用です。
ここには、千鳥格子と命名したのは飛騨の名工が作った地蔵堂の格子戸の組子を荘川村が指定文化財に指定した際にこの組子を千鳥格子と命名したように記載されています。
この地蔵堂は、現在は高山市指定の有形民俗文化財で千鳥格子御堂という名称になっています [2]
いっぽう岐阜県の公式ホームページ [3] に、概要として大変気になる下記の記事が掲載されていました。

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六廐金山の繁栄した、慶長・元和頃「六廐の了宗寺」を建てた棟梁がこの辻堂を建てたと言われる。
小間返しの格子組で、千鳥になっており、明治の初期に高山の大工が、この技法を知ろうとして格子の一部を壊したと言われている。

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上記「小間返しの格子組で、千鳥になっており」という箇所に重要な情報がありました。
小間返し」「格子組」「千鳥」は、すべて社寺に関係する建築用語です。

●「小間返し」:垂木や格子など細長い部材を連続的に並べるときに、見込寸法と同じ間隔をあけてならべること [4]
●「格子組」:感覚的に、太い材で‘枡組’(正方形)に組むこと [5]
●「千鳥」:互い違いになっている状態、または互い違いに施工すること。ジグザグに歩く千鳥足から来ていると思われる [6]

つまり、荘川村が指定文化財に指定した際に地蔵堂の小間返しの格子の正方形状の組子が”互い違い、すなわち千鳥、になっていた”ので、千鳥状の格子、すなわち千鳥格子と命名したのであると考察されます。
従って命名には、Photo. 1 (b)いわゆる千鳥格子を想定したのではないと考えられます。
これで今までの疑問が解けたような気がします。

 おそらく建築に関係する人の中には千鳥格子という名称からすぐにPhoto. 1 (b)ハウンドトゥース チェックを想起しない人がいるのかもしれません。
わたしは建築には無縁ですので、千鳥格子という名称からすぐにPhoto. 1 (b)ハウンドトゥースを想起しました。

 皆様はいかがでしょうか。
どうも千鳥格子という名称は、あいまいさが漂っています。
厳密に定義したいと思いませんか。
そこで下記ご提案です。

(1)いわゆる千鳥格子つまりPhoto. 1 (b)ハウンドトゥース チェック千鳥格子とよぶことにする。
(2)Photo.1 (a)は、飛騨組子と呼ぶことにする。
次はわたし流の提案です。
(3)あるいはPhoto.1 (a)は、網代文様組子と呼ぶこととする。

 わたし流の提案に関して補足いたします。
日本の伝統的な文様として、網代文様があります。
Photo. 2網代文様を示します。
右側の一崩し網代文様は、Photo.1 (a)飛騨組子そのものです
文様の類別は、数学的には文様群 [10]壁紙群wallpaper group [11] )というカテゴリーで取り扱われます。
そこでは、平面を充填する文様の様式は17種類であるということが定理化されています。
Photo.1 (a)飛騨組子の文様様式は、文様群 c2mm に分類されます。
Photo. 2網代文様は三崩しも一崩しもいずれの文様様式も、文様群 c2mm に分類されます。
従いまして、網代文様組木という名称は、文様群的には同一の様式という一貫性のある合理的な名称であると考えています。
なおPhoto. 1 (b)ハウンドトゥース チェックの文様様式は、上記とは異なる別の文様群 p1m1 に分類されます。
文様群についてはいずれ別の機会に触れたいと考えています。


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Photo.2 網代文様
左:三崩し、 算木崩し (引用:[7]、解説:[8] )、 右:一崩し(引用:[9])