脚物家具

2016年末に定年退職しました。 このブログでは、埼玉県比企郡鳩山町を中心にした植生写真を掲載します。 その他、その地誌、趣味の木工、旅行、お酒にも触れます。

スツール兼サイドテーブルを製作しました:蟻組接ぎに関しての疑問!!!

 木工の仕口に蟻組接ぎというものがあります。
まずはFigure 1をご覧ください。
これが蟻組接ぎです。
より正確には通し蟻組接ぎと呼びます。
さて順次何故この組木を蟻組接ぎと呼ぶのか、またいったいどこがなのかを解明していきたいと思います。
蟻接ぎv5

Figure 1 通し蟻組接ぎ

 まずは板材Aと板材Bが組合う前の状態を Figure 2 に示します。
板材Aを図のYの負の向きに移動させることで、嵌め合いが完成します。

 ここでご確認いただきたいことは、次の事項です。
(1) 板材Aの突起部の木口の形状が台形であり、
(2) 板材Bの突起部の木口の形状が矩形である。
そこでここでは便宜的に、板材Aのようにその突起部の小口の形状が台形の板を台形木口板材と命名することにします。
他方、板材Bのようにその突起部の形状が矩形の板を矩形木口板材と呼ぶことにします。
より細かに見ますと、台形木口板材の突起部木口の台形形状は3種類あり、それは図上の木口 {a1}, {a2, a3, a4, a5 } 及び {a6}の3種です。
これに対して、矩形木口板材の突起部木口の矩形形状はすべて合同で1種類のみとなっています。


蟻接ぎv6

Figure 2 通し蟻組接ぎの組合う前の状態

 初めにこの接手の力学的強度に関して考察します。
この図解からFigure 1 で示した蟻組接ぎでは、板材Aを図のZの正の向きにあるいはBを図のZの負の向きに作用する力に強いことがご理解いただけるかと思います。
次に皆様の直感に頼ることにします。
大雑把に申しますと、
(1)板材Aに対してYの正の向きに作用する外力ならびに
(2)板材Bに対してYの負の向きに作用する外力
を除くその他の向きの外力に対して蟻組接ぎは強い強度を期待できると推察できます。

 実際の家具でご覧になった方もいらっしゃるかと思います。
今回スツールを製作するにあたり、この蟻組接ぎで設計・製作することにしました。
スツールとは、背もたれの無いイス(脚物家具のカテゴリー)と定義されます。
今回はコの字型のスツールで設計しました。
その理由は2点あり、まず可能な限りシンプルにしたいのとさらにソファー用途のサイドテーブルにも適用したかったからです。
Photo. 1 に製作しましたスツール兼サイドテーブルを示します。
この配置では、スツールとして使用できます。
他方90°回転させて側板を天板として配置しますと、サイドテーブルになります。
Photo.2 をご覧ください。


コの字型ですから天板と側板の接合部が弱いと、写真の側板の下部に水平方向の力が働きますと接合部が壊れる可能性があることは容易に推測されます。
このような場合を想定した際には、天板と側板の接ぎ手としての最有力候補が蟻組接ぎになります。

スツール

Photo. 1 スツール兼サイドテーブル:スツールでの配置

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Photo. 2 スツール兼サイドテーブル:サイドテーブルでの配置

 Photo.3 に今回製作したスツールの天板と側板の接合部の写真を示します。
この接合部が、蟻組接ぎです。
Photo.3 の上部の板材が 天板で Figure 1 の板材Aに対応しており、 Photo. 3の下部の板材が側板で Figure 1 の板材Bに対応していることにご注意ください。

あれ、Figure 1 と同じではないよと思われる方もいらっしゃるかもしれません。
実は Figure 1 は、蟻組接ぎの基本形状にすぎません。
Figure 12 を再度見てください。
着眼点は、木口の形状です。
(1)矩形木口板材の突起部木口の形状は、四角形です。
他方
(2)台形木口板材の突起部木口の形状は、台形です。
Photo. 3 の天板の木口は四角形ですから、天板が矩形木口板材であるといえます。
他方、側板の木口の形状は台形ですので、側板が台形木口板材であるといえます。
Figure 1蟻組接ぎの基本形では、矩形木口板材台形木口板材もその突起部の木口のサイズならびに間隔が一定でした。
しかしながら、Photo.3蟻組接ぎでは台形木口板材の突起部の木口形状は両端を除いて合同ですが、その間隔が一定ではありません。
また、矩形木口板材突起部の木口の四角形のサイズが一定ではありません。
Photo.3 は、台形木口板材矩形木口板材突起部の木口のサイズと間隔が一定では無いという差異がありますが、蟻組接ぎのカテゴリーに含めることは可能です。

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Photo. 3 天板(写真上部の板材)と側板(写真下部の板材):スツール兼サイドテーブル

 いよいよここから、基本的な問題に入ります。
Figure 1 をなぜ蟻組接ぎという用語を用いるのかということです。
これを説明するには、日本の伝統的建築に使用されている基本的継手(つぎて)・仕口(しぐち)であるに触れます。
Figure 3 をご覧ください。
とは、2本の角材を直線状に接ぐ継手(つぎて)あるいは直角に接ぐ仕口(しぐち)として使用されたものです [1]
Figure 3 は、直角に接ぐ仕口(しぐち)を示しています。
角材Bの突起した楔状の枘(ほぞ)部をと呼んでいます。
他方角材Aの嵌め合い部は、蟻穴と呼びます。

蟻接ぎv8

Figure 3 蟻:日本の伝統的建築に使用されている基本的継手仕口

 上記の楔状の枘部をなぜと呼ぶのかは、いくつか説があるようです。
個人的に最も有力と考えているのは、この形状を蟻の口器であるという解釈です [2]
Photo. 4 にアリの写真を載せました。
Figure 3 の図解と比較してみていかがでしょうか。
Figure 3 の楔状の枘(ほぞ)部は、蟻の口器、すなわち大あごと類似してますでしょうか。
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Photo. 4 オキナワアギトアリ(写真引用:http://blog.livedoor.jp/antroom/archives/51205483.html


 以上から、Figure 1 及び 2 において、蟻組接ぎと呼ぶべき部分はどこであるか明確になったと思います。
すなわち蟻組接ぎとは、矩形木口板材の楔状の枘(ほぞ)部である突起物であると結論できます。
Figure 4 をご覧ください。

蟻接ぎv7

Figure 4 蟻組接ぎの蟻とは?:矩形木口板材の楔状の枘(ほぞ)部である突起部である


 なお Figure 1蟻組接ぎの基本形と完全に合致しない場合のある種の接手には天秤ざし接ぎという名称が与えられています [1] [2]
Photo. 5 をご覧ください。
これが、天秤ざし接ぎの一例です。
Photo. 3と同様に、天板の突起部の木口の形状が四角形ですから天板が矩形木口板材です。
また手前の側板の突起部の木口は台形ですので、側板が台形木口板材です。
この写真のように、台形木口板材の突起部の木口の台形形状について、その上底が狭い場合の蟻組接ぎ天秤ざしと接ぎと呼んでいるようです [2]
上底が狭い場合で特に極端な場合は台形が三角形に近づきますので、天秤の形象に似てくるところからの命名かと考えられます。
天秤の形象は、Photo. 6 でご確認ください。
以上から、Photo. 3に示すように今回製作したスツール兼サイドテーブル天秤ざし接ぎと呼んでもいいかと考えられます。
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Photo. 5  天秤ざし接ぎ(写真引用:https://carula.exblog.jp/18583329/

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:天秤の皿と吊り糸の形成する2等辺三角形の形象にご注目

 
 なお蟻組接ぎのような接手は組接ぎというカテゴリーに属します。
この組接ぎでは、男木並びに女木という概念があります。
組手(突起部)の枚数が多いほうを女木(めぎ)、少ないほうを男木(おぎ)と呼びます。

 Figure 2を見てください。
この図では、一方の板材Aの組手の枚数が6枚であり、他方の板材Bの組手の枚数が5枚です。
従いまして、板材Aが女木であり板材Bが男木となります。
次に今回製作したスツール兼サイドテーブルでは、Photo. 3に示しますように側板の組手の枚数は6枚であり、天板の組手の枚数は5枚です。
従いまして、側板が女木であり天板が男木となります。

 最後に蟻組接ぎに対応する接合に関して英語圏での表現に関して触れておきます。
Figure 1 のようなものを、英語圏ではdovetailと読んでいます。
ハト(dove)の尾(tail)となります。
Photo. 7 をご覧ください。
納得がいきますよね。
日本と同様に動物の器官の形象から命名するという共通点もあります。

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Photo. 7  ハト(写真引用:http://protect-japan.co.jp/column/483/
 
 英語圏ではFigure 5 に示しますように、蟻組接ぎの部分名称を明確にしている点 [3] は感心し是非取り入れたいと考えます。
今までの説明で使用した用語との対応を確認します。
(1)Pinboard:台形木口板材
(2)Tailboard:矩形木口板材
(3)Tail:
(4)Pin:(なし)
(5)Tail Socket:(なし)
(6)Pin Socket:(なし)
蟻接ぎv9

Figure 5 Dovetail :各部分の用語




参考資料
[1] 大工道具研究会 (2017).木組み・継手と組手の技法 誠文堂新光社

4方十字組手の応用 I:ソファー用サイドテーブルの試作

 四方十字組手の製作から早4ヶ月が経過いたしました。
その際に四方十字組手の応用を構想している旨記事にしました。
その時点にて複数のアイデアはあったのです。
しかしながら2018年の夏が暑すぎたため、日中は空調下の部屋から出ない生活ー言わば夏眠とでも呼ぶのでしょうかーを余儀なくされていました。
ここに至り涼しい日もあり、ようやくその応用品を1品試作してみましたのでご報告いたします。

 品名はソファー用サイドテーブルとなります。
今回は、回転型4方十字組手を適用しております。
Photo. 1をご覧ください。
材料ですが、天板(甲板)SPF無垢材で、その他はホワイトウッド材となります。
サイズは、270mm(W)×360mm(D)×540mm(H)です。
現在は塗装無しですが、今後塗装をして表情を確認する予定です。
また接着剤は使用しておりませんので、部材15品に分解できます。
だから何なのかと聞かれても、答えに窮します。
なお本品の仕口などの詳しい情報は、木木木の工房 INFINITY(製品詳細情報)をご参照ください。


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Photo. 1  回転型4方十字組手の応用 I:試作したソファー用サイドテーブル


 このソファー用サイドテーブルの使用例をPhoto. 2 に示します。
軽量のカップ類はもとより、書籍のような重量物を載せてもゆがんだりひずんだりせず構造安定です。

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Photo. 2 試作したソファー用サイドテーブルの使用例

 なお大東文化大学東松山校舎のオープンカレッジ陶芸(ろくろ)に申し込みましたが、生憎定員未達で入校できませんでしたことを報告します。
無念・・・。

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プロフィール

nonchan

ブログデビューしたてのビギナーです。 定年リタイア後、ルーティンとして週5のウォーキングと週2のスイミングを課してます。 ブログでは、わたし流の生活から派生した事項を載せるつもりです。 まずは、ウォーキング中に撮影した自宅付近の植生の写真を載せます。 趣味の木工も掲載しようかと考えています。