現在私たちは、COVID-19の第五波に直面しています。
まず Figure 1 をご覧ください。
図中の白色のカーブは、7日間(1週間)で移動平均した新規感染者数(以降、移動平均新規感染者数と呼ぶことにします)のグラフです。
第二波、第三波、第四波と比較して、増加の割合(増加の勾配)が急峻であることが明瞭です。
現時点で最大の関心事は、この第五波のピークはいつになるのかということではないでしょうか。
Figure 1 日本におけるCOVID-19の感染者数のグラフ:移動平均新規感染者数(白線)
そこでこのピークを予測することの可否を検討してみました。
検討のベースとしては、今までのCOVID-19に関する厚労省公開のデータとしました。
Figure 2 をご覧ください。
この図は、横軸に 移動平均PCR 検査実施数、縦軸に移動平均陽性率をプロットしたものです。
この移動平均陽性率 vs. 移動平均PCR 検査実施数のグラフに関しては、このブログでのわたしの以前の記事[1]をご参照ください。
Figure 2 移動平均陽性率 vs. 移動平均PCR 検査実施数のグラフ
このFigure 2ではプロットが錯綜して解析が容易ではありません。
そこで、第二波、第三波、第四波、第五波ごとにプロットを解題しました。
まずは、Figure 3, 4, 5 をご覧ください。
これらの図から、過去の第二波、第三波、第四波の移動平均陽性率 vs. 移動平均PCR 検査実施数のグラフの特徴を抽出することを試みます。
まず各グラフには逆行する領域があることが認識できます。
具体的には、Figure 3の7月中旬から8月上旬にかけての領域、Figure 4 の12月下旬から1月上旬にかけての領域、Figure 5 の5月上旬における領域です。
これらの領域は、夏季休暇、年始年末休暇、GW休暇に対応しています。
PCR検査が人を介する作業であるため、この休暇期間ではPCR検査実施数が極端に減少します。
このPCR検査実施数の減少に伴って、anormalな領域が形成されます。
従ってこの領域は無視することとします。
そうしますと、下記の特徴が表出します。
[特徴]
(1) Stage I の存在
Figure 3, 4, 5 には、移動平均PCR検査実施数がほぼ一定値で移動平均陽性率が増加する領域が存在すること。
この領域あるいは現象をStage I と呼ぶこととします。
(2) Stage II の存在
Figure 3, 4, 5 には、Stage I に続いて移動平均PCR検査実施数が増加するとともに移動平均陽性率が増加する領域が存在すること。
この領域あるいは現象をStage II と呼ぶこととします。
(3) Stage III の存在
Figure 3, 4, 5 には、Stage II に続いて移動平均PCR検査実施数がほぼ一定値で移動平均陽性率が減少する領域が存在します。
この領域あるいは現象をStage III と呼ぶこととします。
(4) Stage IV の存在
Figure 3, 4, 5 には、Stage III に続いて移動平均PCR検査実施数が減少するとともに移動平均陽性率も減少する領域が存在します。
この領域あるいは現象をStage IV と呼ぶこととします。
(5) 移動平均新規感染者数のピークの位置
Figure 3, 4, 5には、移動平均新規感染者数のピークが表示されています。
ここで大変重要なこととして、「移動平均新規感染者数のピークは Stage II と Stage IIIの分岐点付近に位置している」という一つの移動平均新規感染者数のピークの位置を推定する経験則が存在するということです。 Figure 4 移動平均陽性率 vs. 移動平均PCR 検査実施数のグラフ:第三波
Figure 5 移動平均陽性率 vs. 移動平均PCR 検査実施数のグラフ:第四波
上記5項目の特徴を踏まえて、 Figure 6 を見ます。
すると現在直面する第五波では、Stage I を経て現状は Stage II にあるものと考えられます。
従って、第五波のピークはまだ先であり、上記特徴(5)の移動平均新規感染者数のピークの位置を推定する経験則の観点からStage III の兆候が出現するのを待機するということになります。
[記事]
[1]:新型コロナウィルス(COVID-19)の感染者数に関しての考察(その8)ーPCR検査実施数と陽性率