北陸温泉旅行時には、日本酒を多種飲みました。
Table 1 に頂いた地酒を要約しました。
また、Photo. 1 にその写真を載せました。

Table 1  北陸温泉旅行で飲んだ日本酒:最上段の「浦霞」はわたしが愛飲している日本酒でレファレンスです
酒造名銘柄種類アルコール度日本酒度酸度原料米精米歩合
佐浦浦霞本醸造15+1~+21.3~1.4(不明)0.65
苗加屋琳青(不明)17~1801.7雄山錦0.55
琳赤(不明)17+31.5山田錦0.55
福光屋歴々純米14+10(不明)(不明)0.65

加賀鳶純米吟醸16+41.4山田錦60%,金紋錦40%0.6
桝田酒造満寿泉桝形15.8+51.5(不明)0.6
吉江酒造太刀山純米15.1+41.6(不明)0.6
立山酒造立山銀嶺普通酒15~16+4~+51.4~1.5(不明)0.7
吉田酒造手取川名流純米15.8+11.4山田錦、五百万石0.55
黒龍酒店九頭龍(黒龍)普通酒15+31.1五百万石0.65
数馬酒造竹葉純米16~17+12五百万石0.6
中村酒造加賀百万石造り純米大吟醸16~17+51.3山田錦0.5
鹿野酒造常きげん本醸造15.5+21.3美山錦0.6

常きげん純米15.3+11.5加賀五百万石0.6
伊藤酒造越の鷹純米(不明)+2~+4(不明)(不明)(不明)
眞名鶴酒造眞名鶴山廃純米15.5+11.5五百万石特等米0.6


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Photo. 1 日本酒:左から琳青、琳赤、歴々、加賀鳶、満寿泉
琳青、琳赤:富山駅中で購入し、琳青は帰りの車中にて飲みました。
歴々:金沢近江町市場の寿司店の歴々でいただきました。
加賀鳶:金沢近江町市場の寿司店の近江町市場すしでいただきました。
満寿泉:富山駅中の寿司店すし玉で飲みました。このとき太刀山もいただきましたが、写真を取り損ねました。

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Photo. 2 左から立山、手取川、九頭竜、竹葉、加賀百万石造り、常きげん(本醸造)、常きげん(純米)
立山、手取川、九頭竜:地酒飲み比べ(ゆのくに天祥)ー北陸日本海酒巡りコースーで飲みました。
竹葉、加賀百万石造り、常きげん(本醸造):地酒飲み比べ(ゆのくに天祥)ー能登・金沢・加賀酒紀行コースーでいただきました。
常きげん(純米):山代温泉の手打ち蕎麦屋さんの加賀上杉で飲みました。

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Photo. 3 左から越の鷹、眞名鶴
越の鷹、眞名鶴:芦原温泉のつるやさんでいただきました。


 これを契機に、少し日本酒の勉強をしてみました。
まず日本酒の数値指標としては、主としてアルコール度、日本酒度、酸度、精米歩合があります。
よく耳にする用語ですよね。

 まずざっくり、用語の定義をします。

Definition 1.
日本酒の成分であるエタノールの体積濃度をアルコール度と呼ぶ。
単位は、%です。

Definition 2.
日本酒の比重を p とします。
このとき、下記で与えられる数量 N日本酒度と規定する[#1]
N=(1/p-1)×1443.           [1]
Remark 1.
日本酒度とは、要は酒の比重値の相対値です。
日本酒が水の比重すなわい 1 と同一であれば、p = 1 ですから式[1]より N = 0 となります。
つまり、この場合は日本酒度 0 と規定されます。
p < 1 ならば N > 0、p > 1 ならば N < 0 となることは、明らかです。

Remark 2.
日本酒の成分としては、主として水分(重量濃度で78%)、メタノール(14~16%)、糖質(3~5%)です[#2]
これに、タンパク質(<1%)が付加されます。
上記の主たる3成分の比重は、それぞれ1, 0.79 [#3]、1.54(ブドウ糖 [#4])となります。
従いまして、ざっくり言いますと糖質が多ければ、日本酒の比重が大きくなり、よって日本酒度が減少するといえます。
ここで注意することは、日本酒度とは日本酒の糖質成分(重量濃度)の指標であるとどうやら考えてよいということです。

Definition 3.
日本酒10mlを中和するのに要する0.1N-NaClの容量 ml の数量 酸度と呼ぶ

Remark
日本酒中に存在する酸とは有機酸であり、醪(もろみ)中の酵母によって生成されるようです[#1]。
最も多いのはコハク酸で、ついでリンゴ酸、乳酸、クエン酸、酢酸となります[#1]。
基本的には、酸度は日本酒の酸味を支配します。
しかし単純ではないのは、各有機酸で個別な酸味を持っていることです。
例えば、コハク酸は塩味・苦味・酸味を与えます[#5]
リンゴ酸は、爽快感のある酸味を出します[#6]
乳酸は、クセのない、やわらかみのある酸味を出します[#7]

Definition 4.
白米のその玄米に対する重量の割合を、精米歩合と呼ぶ[#1]。

Remark
米粒の外側に多く存在するタンパク質・脂肪は、
酒の雑味となります。
そのため、
上記成分は清酒造りの精米工程で除去されます。
精米歩合は、この除去の程度を指標します。
この数値が低い程、より高度に精米されていることになります。
例えば、本醸造酒70%以下、吟醸酒60%以下、大吟醸酒50%以下と規定されています。

 日本酒の風味を評価するのに、横軸に日本酒度、縦軸に酸度をとった2次元平面上にプロットする手法がよく使用されます。
これを、日本酒度 vs. 酸度プロットと呼ぶことといたします。
今回の北陸旅行にて賞味しましたTable 1の日本酒(
北陸の地酒)をプロットしてみました。
Figure 1をご覧ください。


日本酒の風味として、甘辛度濃淡度という量を導入して評価する手法があります。
甘辛度Y濃淡度Zは、下記にて規定されます[#8]

Y = 193593 / (1443+N ) - 1.16 m - 132.57      [2]
Z = 94545 / (1443+N ) + 1.88 m - 68.54                  [3]
 
ここで、N日本酒度m酸度を表しています。
すなわち、甘辛度濃淡度もともに、日本酒度酸度の関数となっています。
Figure 1 のcurve Bは、甘辛度Y=0を満たす場合の酸度日本酒度の関数として描いた曲線です。
curve Bの上側の領域が甘辛度Y<0すなわち辛い味覚となる領域、curve Bの下側の領域が甘辛度Y>0すなわち甘い味覚となる領域となります。
他方、
Figure 1 のcurve Aは、濃淡度Z=0を満たす場合の酸度日本酒度の関数として描いた曲線です。curve Aの上側の領域が濃淡度Z>0すなわち濃い味覚(濃醇)となる領域、curve Aの下側の領域が濃淡度Z<0すなわち淡い味覚(淡麗)となる領域となります。

 Figure 1日本酒度酸度平面は、curve A とcurev Bによって4つの領域に分割されます。

両曲線ともに、実際上はこの領域ほぼ直線で十分近似されています。
この領域の中で、同図中でarea P, Q, Rと記載された領域に着目します。

1) area P:濃醇かつ辛口、すなわち
濃醇辛口
2) area Q:淡麗かつ辛口、すなわち淡麗辛口
3) area R:淡麗かつ甘口、すなわち淡麗甘口

と分類することができます。
Figure 1 から、琳青竹葉の2種が濃醇辛口に、九頭竜淡麗甘口に類別されます。
一方Table 1の中のその他の8種が、すべてすべて淡麗辛口に類別されることがわかります。

 実際私の感想を申し上げますと、九頭竜が最も淡麗な印象であり、琳青が最も濃醇な印象でした。
Figure 1 では、
九頭竜のダイアグラム上のロケーションはcurve Aから最も離れ、すなわち淡麗さが最有力であり、個人的印象と一致しています。
他方竹葉が最も濃醇のロケーションとなっており、個人的印象と少し差異がでています。
Table 1 において、歴々は日本酒度が+10と最大値を持っていますが、酸度の数値が不明のためFigure 1にはプロットすることができませんでした。
淡麗さが結構強いというわたしの印象でした。
普段飲んでいる浦霞に近い酒は、常きげん(純米)加賀鳶ではないかという印象でした。
Figure 1では、浦霞
常きげん(純米)が近接しており、わたしの印象と符合しています。

 なお味覚は単純ではなく、料理との組み合わせ、体調、飲む順番など他の多様な因子がありより複雑であることは間違いありません。
わたしの結論としては、常きげん(純米)加賀鳶九頭竜あたりを機会があれば再飲してみたいと考えています。
また竹葉は印象が薄いのですが、飲み比べコースでいただいたので次にこの酒だけ単独でも再飲してみたいなとも考えています。




日本酒diagram
Photo Figure 1  日本酒度 vs. 酸度プロット      
curve A: 濃淡度が零の曲線、curve B:甘辛度が零の曲線
area P:濃醇辛口、area Q:淡麗辛口、area R:淡麗甘口


[#1]: 灘酒研究会. 灘の酒 用語集 http://www.nada-ken.com/main/jp/index_sa/314.html
[#2]: Wikipedia. 日本酒. https://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%97%A5%E6%9C%AC%E9%85%92#.E9.85.B8.E5.BA.A6
[#3]: Wikipedia. メタノール. https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%A1%E3%82%BF%E3%83%8E%E3%83%BC%E3%83%AB
[#4]
 Wikipedia. ブドウ糖. https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%B0%E3%83%AB%E3%82%B3%E3%83%BC%E3%82%B9

[#5]:Wikipedia. コハク酸.
 https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%B3%E3%83%8F%E3%82%AF%E9%85%B8
[#6]:Wikipedia. リンゴ酸. https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%AA%E3%83%B3%E3%82%B4%E9%85%B8

[#7]:松尾薬品産業. 乳酸. http://www.matsuo-yakuhin.co.jp/lacticacid.html
[#8]:横堀正敏. フレーバー評価技術の確立による製品の高付加価値化と品質管理への応用. http://www.saitec.pref.saitama.lg.jp/research/h26/hokok/14-1-8.pdf
甘辛度と濃淡度の原典に当たることができませんでした。