無限大記号$ \infty$を呈する非線形現象の続きです。
先に非強制Duffing振動子が 、無限大記号$ \infty$を呈する物理現象であることを申し上げました。
今回は、天体力学上の事象をあげます。

 よく知られていますように2つの質点が重力で相互作用する系での力学的運動に関する問題すなわち2体問題は、一般的な解析解を求めることができます [1]
しかしながら3つの質点が重力で相互作用する系での力学的運動に関する問題すなわち3体問題は、一般的には解析解がありません。
このことは、1890年にPoincaréによって導かれました。
しかしながら特別な場合は、例外的に解が得られています。
先ごろまでにその例外は1例しか知られていませんでした。
それは、2体が円軌道をしかつその2体に比較し他の1体が質量が小であるという仮定をした場合で、いわゆる円制限3体問題の場合のみでした。
これが有名な Lagrange [2] と呼ばれるもので、 Lagrangeの1772年の論文です。
この発見から実に221年ぶりに1993年サンタフェ研究所Mooreが3質点の質量が等しい場合、8の字状の解 (figure-8 solution) 8の字軌道(figure-8 orbit)があることを見だしました。
FIGURE 1Mooreのホームペイジ [3] からコピーした動画を示します。
いかがですか、この質点の軌道形状は無限大記号$ \infty$と類似していますね。
重力による相互作用ですから、運動方程式は基本的には質点間の距離の2乗に反比例するような非線形の微分方程式になっていることはすぐに理解できます。
従いまして、この8の字軌道非線形事象といえます。
先の非強制Duffing振動子非線形事象であったことと共通しています。
loop
FIGURE 1 8の字軌道:引用 Moore [3]



参照サイト
[1]http://www.ep.sci.hokudai.ac.jp/~ssd/doc/SEC02/section2.pdf
[2]https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%A9%E3%82%B0%E3%83%A9%E3%83%B3%E3%82%B8%E3%83%A5%E7%82%B9
[3]http://tuvalu.santafe.edu/~moore/gallery.html