実効再生産数

2016年末に定年退職しました。 このブログでは、埼玉県比企郡鳩山町を中心にした植生写真を掲載します。 その他、その地誌、趣味の木工、旅行、お酒にも触れます。

新型コロナウィルス(COVID-19)の感染者数に関しての考察(その9-1)ー実効再生産数に変わる単純な感染指標その1

まずは日本疫学会のHPを参考し、下記にて基本再生産数実効再生産数の定義を確認しておきます。

Definition 1:基本再生産数
 基本再生産数とは、ある感染症に対してその感染症に対する免疫を持たない集団にその感染症を最初に持ち込んだ一人の感染者が、感染力を失うまでに(免疫の獲得もしくは死亡により)感染させた人数の平均値。

Remarks 1 その感染症に対する免疫を持たない集団を、全員が感受性である集団という表現をします。
     2 何人に感染させるかを数値化した感染性の指標です。

Definition 2:実効再生産数
 実効再生産数とは、集団全員が必ずしも感受性ではない場合(感染が流行中である場合や、感染が拡がり、免疫を持つようになったひとが増えている段階やワクチン接種が拡がっている状況)において一人の感染者が、感染力を失うまでに(免疫の獲得もしくは死亡により)感染させた人数の平均値。


 COVID-19に関して、基本再生産数R0は、1.4 から 6.49 (平均:3.28)であると言われています。
この数値が幅をもつ理由は、環境因子や感染集団の行動様式といったその国の社会性の差異や基本再生産数を算定する際の数理モデルの差異によるもののようです。

 次に実効再生産数ですがこれを算定するのは、直感的に厄介な印象を受けます。
というのも、感染してから回復するまでの時間経緯を追跡すると下記となります。
(1) 感染した時点
(2) 感染しているが症状はなく感染性もない期間:潜伏感染期
(3) 感染し症状はないが感染性がある期間
(4) 感染し症状があり感染性もある期間
(5) 感染し症状があるが感染性が無い期間
(6) 感染し症状も無なくなった(感染性も無い)時点

一方で各地方自治体から新規感染者数が報告されますが、その感染者が上記の時間段階のどの段階であるかは様々です。
またPCR検査を実施した時点、感染が判明した時点、報告する時点もそれぞれ時間的遅延があります。
こうした状況で、実行再生産数、すなわち1人の感染者が生産する感染個体数の平均値を算定するには、合理的仮定を採用し統計数学を適用することになるであろうと推測されます。
ここでは、この内容での展開はいたしません。

 ここで考察することは、実行再生産数より単純で納得するのが容易な展開です。
私は疫学や感染学に関わっていませんので実行再生産数を算定することにはあまり興味がありません。
算定がより容易で感染が拡大しているのか、平衡状態なのか、縮小しているのかを合理的に推定できる感染指標が欲しいだけです。
今$d$を日付とします。
$d$は、excelで使用されているシリアル値とします。
$I(d)$を日付$d$における新規感染者数とします。
ここで、下記で定義される比を考察します。
\[R (d)= \frac{I(d)}{I(d-1)},\ldots\ldots{[1]}\]
この比 $R(d)$ は新規感染者数の前日比であることは明白です。
この数量をここでは新規感染者数前日比と呼ぶことにします。
これを計算するまでもなく、そのグラフは滅茶苦茶乱雑なものになると推定されます。
それは、PCR検査数が定数ではなく1週間のうち土曜日、日曜日で、さらにまた祭日が続くと大幅に低くなり、その結果新規感染者数が不連続的に変化するためです。
そこで、次の数量を導入します。
 \[\widetilde{I}(d)_{0\Rightarrow-6}\equiv\sum_{i=0}^6 {I(d-i)}/7\]
ここで$\widetilde{I}(d)_{0\Rightarrow-6}$ は、日付$d$から7日間の新規感染者数の平均値を表していることがご理解できると思います。
次に、日付 $d$ から8日前から13日前の新規感染者数の平均値$\widetilde{I}(d)_{-7\Rightarrow-13}$を算定します。
\[\widetilde{I}(d)_{-7\Rightarrow-13}\equiv\sum_{i=7}^{13} {I(d-i)}/7\]
次に式[1]を次のように書き改めます。
\[\widetilde{R}(d)_{0\Rightarrow-13} \equiv  \frac{\widetilde{I}(d)_{0\Rightarrow-6}}{\widetilde{I}(d)_{-7\Rightarrow-13}}, \ldots  \ldots {[2]} \]
ここで、この数量 $\widetilde{R}(d)_{0\Rightarrow-13}$は日付 $d$ から1週間前の新規感染者数の平均値と日付 $d$ から2週間前の新規感染者数の平均値との比を表しています。
$R(D)$を日付 $d$ における新規感染者数前日比と読んだことに対応して、この数量 $\widetilde{R}(d)_{0\Rightarrow-13}$ を日付 $d$ における新規感染者数週間比と呼ぶことにします。

 さてCovid-19の国内の新規感染者数に関しての厚労省の公表データに基づいて新規感染者数週間比を計算し日付の関数でプロットした結果を Figure 1 に示しました。

 
新規感染者数週間比
Figure 1 新規感染者数週間比 $\widetilde{R}(d)_{0\Rightarrow-13}$



 ここでの記事の文字容量が制限を超過しましたので、以降の議論は次の記事に掲載します。




新型コロナウィルス(COVID-19)の感染者数に関しての考察(その7)ー実効再生産数と感染数理モデル

考察(その2)での感染数理モデルから実効再生産数を算定する試みをしてみました。
また日本での感染データを感染数理モデルで解析し実効再生産数を計算してみました
考察(その2)での感染数理モデルを再度記載します。

\[\frac{dS}{dt} =- \beta SI\]
\[\frac{dI}{dt} = \beta SI- \gamma I\]
\[\frac{dR}{dt} = \gamma I\]

ここで、変数は$S$、$I$, $R$です。
$S$ は、the number of $susceptible$ individuals の $S$ であり, 感染の可能性のある個体の数量、すなわちまだ感染していない人の数(健康人口と呼ぶことにします)を表しています。
次に $I$ ,は, the number of $infected$ individuals の $I$ であり, 感染した個体の数量、すなわちすでに感染している人の数(感染人口と呼ぶことにします)を表しています。
変数 $R$ は、the number of $recovered$ individuals の $R$ であり、回復した個体の人数(回復人口と呼ぶことにします)を表しています。
なお $R$ には死者を含めます。

上記微分方程式の第2式から、

 \[\frac{dI}{dt} = \gamma \big(  \frac{ \beta S}{ \gamma }-1 \big) I\]

となります。
ここで、実効再生産数 ( effective reproduction number ) を定義します。
h実効再生産数は普通は$R$と表記しますが、回復人口と識別するためここでは$ERN$と表記します。
\[ERN \equiv    \frac{ \beta S}{ \gamma } ,    ......[1]\]

実効再生産数$ERN$を考察しましょう。
以下の3つのケースがあります。
\[(1)  ERN>1 \Longrightarrow  \frac{dI}{dt}  > 0 \]
\[(2)  ERN=1 \Longrightarrow  \frac{dI}{dt}  = 0 \]
\[(3)   ERN<1 \Longrightarrow  \frac{dI}{dt}  < 0 \]
すなわち、
\[(1) ERN>1 \Longrightarrow「感染人口は増加します」\]
\[(2) ERN=1 \Longrightarrow 「感染人口は極値をとります」\]
\[(3) ERN<1 \Longrightarrow 「感染人口は減少します」\]
$I$は、感染人口ですから初期値は0で次第に増加しその後減少する傾向の関数ですから、上記(2)の場合の$I$の極値とは極大値と考えられます。
この意味でこの数理モデルによる実効再生産数$ERN$の定義は合理的であるといえます。

 さて日本におけるCOVID-19の感染状況を視覚化しました。
Figure 1 をご覧ください。
厚労省公開のデータ [1] を使用して縦棒グラフと折れ線グラフをプロットしています。
(1) 新規感染者数縦棒グラフ
(2) 新規退院者数縦棒グラフ
(3) 新規死亡者数縦棒グラフ
(4) 累積感染者数グラフ
(5) 感染人口グラフ
(6) 感染人口階差グラフ(移動平均処理)
(7) 回復人口グラフ



COVID-19 20200508
Figure 1 日本におけるCOVID-19の感染状況

 ここで最も注目すべき点は、感染人口グラフがピークアウトし減少傾向を見せかけていることです。
感染人口階差グラフ(移動平均処理)は、感染人口グラフの微分を表現しています。
従いまして、感染人口階差グラフ(移動平均処理)の細かな揺動を均して見た際に、5月3日付近で横軸を交差しているとざっくり判断します。
これより感染人口グラフのピークは、5月3日付近と判断します。
Figure 1の開始点は1月15日ですが、これより5月3日は110日後となります。

 さてFigure 1にある感染人口グラフ感染数理モデルを用いてフィッティングすることを試みます。
この際に、感染人口グラフのピークが5月3日(110日後)であることにも留意することとします。
計算の初期値は下記のとおりです。
Figure 2 がその結果です。  

[1]  $S(0)=20000=1.4\times 10^{4} $; (people)
[2]  $I(0)=1$; (people)
[3]  $R(0)=0$; (people)
[4]  $\beta=0.0000644=6.44\times 10^{-5}$; (/people/day)
[5]  $\gamma=0.211968$; (/day)



simulated Japan 1
Figure 2   日本での感染人口$I(t)$の時間変化
水色カーブ:厚労省データからの算定値,  紫色カーブ:数理モデル (SIRモデル ) での計算値
$S(0)=20000=2\times 10^{4} $, $I(0)=1$, $R(0)=0$
$\beta= 0.0000644=6.44\times 10^{-5}$, $\gamma=0.211968$


 次に、Figure 3健康人口感染人口回復人口のシミュレーション結果も示します。
この図には、健康人口から算定した累積感染者数グラフも併せて示してます。
Figure 1の実際値と比較して、回復人口グラフに乖離が見られます。
simulated Japan 1-0

Figure 3   韓国での感染のシミュレーション結果
紫色累積感染者数、 青色健康人口、 緑色回復人口、 赤色感染人口
Figure 2と同一の条件でのシミュレーション結果

 さてこのシミュレーションから、[1]で定義したERNを計算してみました。
Figure 4 をご覧ください。
起点の1月15日(0 day)でのERN=6.0から、5月3日(110 days)でのERN=0.99、5月8日(115 days)でのERN=0.70と単調減少する曲線となっています。
起点から40日後までERN=6を維持していますが、この数値は基本再生産数と考えられます。
このシミュレーションでは、基本再生産数(Basic reproduction number) は、BRN=6.0と判断できます。
なお、COVID-19BRN値としては、1.5~6.49(平均値:3.28)という数値が公表されています[2]


simulated Japan 1-6
Figure 4 日本での実効再生産数 ERN のシミュレーション結果
横軸は1月15日からの経過日数
Figure 2と同一の条件でのシミュレーション結果


[参照サイト]

ギャラリー
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プロフィール

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ブログデビューしたてのビギナーです。 定年リタイア後、ルーティンとして週5のウォーキングと週2のスイミングを課してます。 ブログでは、わたし流の生活から派生した事項を載せるつもりです。 まずは、ウォーキング中に撮影した自宅付近の植生の写真を載せます。 趣味の木工も掲載しようかと考えています。