考察(その3)では韓国での感染データに関して触れ、感染数理モデル ( SIRモデル ) で説明ができるかどうかを検討してみました。
それから1ヶ月以上経過しデータも蓄積してきましたので、今回再度トライしてみます。
まずは、Figure 1 をご覧ください。
4月27日現時点での最新データで作成したグラフです。

 ここで基本的データとしては、日付ごとの新規感染者数新規退院者数新規死亡者数の3種類です。
Figure 1において、下記の5種類のグラフが示されています。

(1)縦棒グラフで新規感染者数を日付Dの関数で表示したグラフ(以降、新規感染者の縦棒グラフと呼びます)。
(2)上記新規感染者数を日ごと累積した累計値を日付Dの関数で示したグラフ(累積感染者数グラフと呼びます)
(3)累積感染者数グラフを対数表示したグラフ
(4)新規退院者数新規死亡者数の和を日ごと累積した累計値を日付Dの関数で示したグラフで、これは日付Dでの感染から回復している人口を意味します(回復人口グラフと呼ぶことにします)。
(5)日付Dでの累積感染者数から日付Dでの回復人口を差し引いた人口、これは日付Dでの感染している人口を意味します(感染人口グラフと呼ぶことにします)

この図から、下記事項を確認することができます。

(1) 新規感染者数は3月2日付近でピークを示していること
(2) 累積感染者数グラフは単調増加し現時点では飽和をむかえつつあること
(3) 回復人口グラフも単調増加を示しその勾配を減じていますがまだ飽和していないこと
(4) 感染人口グラフは3月13日付近でピークをしめしていること
(5) 感染人口は現時点でも約1800名ほどいること





Korea
Figure 1 新規感染者数の縦棒累積感染者数回復人口
(韓国)
:KCDC公表のデータ [1] から作成



 さて韓国において現時点での最大の関心事としては、

「感染人口が100人、10人、1人を割るのはいったいいつであるのか」

ということではないでしょうか。

 すでに考察(その3)では感染数理モデルでシミュレートしひとつの回答をしました。
Figure 2 をご覧ください。
その際に使用したパラメータでのシミュレーション結果を示してます。
考察(その3)の際の感染人口グラフに対しては、近接していたのですが、現時点では乖離してしまっています。
今回は新データを基に再度シミュレーションにトライしてみたいと思います。


simulated Korea1-1
Figure 2   韓国での感染人口$I(t)$の時間変化:考察(その3)
水色カーブ:KCDCデータからの算定値,  紫色カーブ:数理モデル (SIRモデル ) での計算値
$S(0)=50000000=5\times 10^{7} $, $I(0)=1$, $R(0)=0$
$\beta=0.0000002279=2.279\times 10^{-7}$, $\gamma=11.2$



 考察(その2)において説明しました感染数理モデル (SIR モデル )を適用して、 Figure 1 感染人口グラフをフィティングしてみたいと思います。
Figure 3 をご覧ください。
ここには、Figure 1 での感染者数(感染人口)水色カーブで示されています。
このカーブに感染数理モデル (SIR モデル )を適用してフィティングした数値計算の結果が紫色カーブで示されています。
シミュレーションには、scilabを用いました。
この数値計算で使用した初期値とパラメータ値は下記となります。

[1]  $S(0)=14000=1.4\times 10^{4} $; (people)
[2]  $I(0)=1$; (people)
[3]  $R(0)=0$; (people)
[4]  $\beta=0.0001863=1.863\times 10^{-4}$; (/people/day)
[5]  $\gamma=0.4416$; (/day)


[2],[3] は合理的な数値です。
[1], [4], [5] は、実際値をもっともよく近接する数値となっていると考えています。
なおこの数値計算の結果では、感染者数(感染人口)$I<100 (people)$となるのが161日後、$I<10 (people)$となるのが214日後、$I<1 (people)$となるのが267日後すなわちそれぞれ6月29日、8月21日、10月13日となりますが、いかがでしょうか。

simulated Korea2

Figure 3   韓国での感染人口$I(t)$の時間変化
水色カーブ:KCDCデータからの算定値,  紫色カーブ:数理モデル (SIRモデル ) での計算値
$S(0)=14000=1.4\times 10^{4} $, $I(0)=1$, $R(0)=0$
$\beta= 0.0001863=1.863\times 10^{-4}$, $\gamma=0.4416$


 このシミュレートでは感染人口グラフの他に、累積感染者グラフ回復人口グラフも合わせて算定できます。
Figure 4 をご覧ください。
Figure 1と比較しますと、累積感染者グラフおよび回復人口グラフはいまだ現実値との乖離が生じていることがわかります。
まだパラメータ数値が最適でないのかもしれません。

simulated Korea2-2
Figure 3   韓国での感染のシミュレーション結果
紫色累積感染者数、 緑色回復人口、 赤色感染人口
Figure 3と同一の条件でのシミュレーション結果


[参照サイト]
[1]:KCDC