相欠き深さ

2016年末に定年退職しました。 このブログでは、埼玉県比企郡鳩山町を中心にした植生写真を掲載します。 その他、その地誌、趣味の木工、旅行、お酒にも触れます。

飛騨組子(千鳥格子)技法の原理(続き一般化)

 飛騨組子(千鳥格子)の技法の原理の続きです。
前回は、3+3=6本の角材の組手の技法原理を説明しました。
今回は角材の数を増加させた場合すなわち一般化について記載します。

 Figure 1 をご覧ください。
この図は4+4=8本の角材の組手の技法原理を説明している図です。
前回の説明を敷衍すれば、8本のうち6本すなわち横方向のH1,H3,縦方向のV1,V2,V3,V4はすべて同一の断面形状です。
すなわち相欠き深さを板厚の2/3にした角材です。
残りの2本、横方向のH2,H4を相欠き深さを板厚の1/3としています。

 前回の説明から下記のような手順でくみ上げればよいと理解いただけると思います。

(1)V1とV3を机上に置きます。
(2)その上にH1とH3を、相欠きを重ねて接ぎます。
(3)V2,V4をH1,H2の上に相欠きを重ねて接ぎます。
(4)V1とV3を持ち上げ机上から浮かせます。
(5)V1,V2,V3,V4の相欠きに生成された(板厚に相応する長さを持つ)に空き間にH2とH4を横方向から挿入します。
(6)持ち上げていたV1とV3を机上におろし、H2ならびにH4とV1,V2,V3,V4の相欠きのはめ合いをさせれば完成です。


FIGURE 1 飛騨組子(千鳥格子):3+3=6本の場合



 上記の説明を帰納すれば、一般化することができます。
(m+n) 本の角材から構成された飛騨組木(千鳥格子)の場合について記載します。
縦方向の角材がm個、横方向の角材がn個とします。
縦方向角材は、V1,V2,...,Vm-1,Vmとなり、横方向角材はH1,H2,...,Hn-1,Hnとなります。

 m,nの偶奇により4つのケースが考えられます。
ここでは、そのうちの一つのケースである m=even, n=evenの場合、m, n>=2に関して記載します(Case 1)。
FIGURE 2をご覧ください。

 角材の断面形状としては2種類で、(mn-n/2) 個の角材が FIGURE 1 のV1 同様に相欠き深さが板厚の2/3のもの、残る n/2 個が FIGURE 1 の H2 同様に相欠き深さが板厚の1/3のものとなります。
上記手順の記載を拡張すると、下記の手順でくみ上げればよいと理解いただけると思います。

(1)V1,V3,...Vm-1を机上に置きます。
(2)その上にH1,H3,...Hn-1を、相欠きを重ねて接ぎます。
(3)V2,V4,...,VmをH1,H3,...Hn-1の上に相欠きを重ねて接ぎます。
(4)V1,V3,...,Vm-1を持ち上げ机上から浮かせます。
(5)V1,V2,V3,V4,...,Vm-1,Vmの相欠きに生成された(板厚に相応する長さを持つ)空き間に,H2,H4,...,Hnを横方向から挿入します。
(6)持ち上げていたV1,V3,...Vm-1を机上におろし、H2,H4,...,HnとV1,V2,V3,V4の相欠きのはめ合いをさせれば完成です。

他の3つのケースは下記となります。

Case 2: m=even, n=odd
Case 3: m=odd, n=even
Case 4: m=odd, n=odd

以上のケースに関しては、類推してください。


FIGURE 2 飛騨組子(千鳥格子 ):縦 m 本、横 n 本、計(m+n)本の場合





 なお川越高等技術専門校に通行していた時に自由課題として製作した飛騨組子Photo. 1に示しました。
剣留にて縦框に接いだ横桟の上部には一重菱の組子、その下部には縦横14枚から成る飛騨組子を配置してます。
この飛騨格子は、m=n=7の場合に相当します。
上部の軽量な菱と下部の重厚な飛騨組子の対比で、心地よいリズムを生成するように意図しましたが、いかがでしょうか。


IMG_20170927_080929
Photo. 1 川越高等技術専門校での自由課題
横桟上部に一重菱の組子、下部には飛騨組子千鳥格子, m=n=7)を配置


なお最新の記事も是非とも参考願います。
 ⇒ 枡格子(その3):四ツ目編み枡格子

飛騨組子(千鳥格子)技法の原理




 以前飛騨組子を作製し記事  [1] にしましたが、その際に飛騨組子の技法上の原理説明を省きました。
今回は今後のためこの原理の説明を試みます。
難しい話ではないのですが、図面を作るのをさぼっていたためのびてしまいました。

 6本の角材から組む飛騨組子(千鳥格子)は、5本の同一断面形状の角材とそれとは異なる1本の角材形状の角材から構成されます。

角材V1,V3の断面形状は、FIGURE 1 の右側に示しています。
3か所の凹部を持ちます。
この凹部を専門的には相欠きと申します。
この凹部の深さ、すなわち欠き取る深さは角材の板厚の2/3です。
他方 H1, H3の断面形状は、FIGURE 1 の下方に示しています。
これも3か所の相欠きを持ちます。
すぐわかりますように、V1あるいはV3をひっくり返したものです。
また、V1,V3,H1,H3はすべて同一形状であることもわかります。
手順としては、下記となります。 
(1) V1とV3を机上に置きます。
(2) その上にH1とH3を、相欠きを重ねて接ぎます。

 

FIGURE 1 V1,V3の上にH1, H3を置きます


 次にFIGURE 2 をご覧ください。
5本目の角材 V2 を持ってきます。
これは、今までの角材と同一の断面形状です。

(3)このV2をH1,H2の上に相欠きを重ねて接ぎます。



FIGURE 2 V2 を置きます


 FIGURE 3をご覧ください。
この図は、このときのH1またはH3とV1,V2,V3との相欠きの重なりの状況を模式的に示しています。
相欠きの深さがすべて2/3としたため、H1またはH3とV1,V2,V3との相欠きに空き間が形成されていることがご理解いただけますでしょうか。


FIGURE 3 H1あるいはH3とV1,V2,V3の相欠きの状況


  さてこの時にV1とV3を上方に持ち上げた際の状況は、どうなるでしょうか。
FIGURE 4をご覧ください。
V1とV2には上向きの外力が作用し、その他のH1,H2,V2には下向きの重力が作用します。
FIGURE 3で説明しました相欠きの空き空間による効果です。
このときV1またはV3とV2との位置関係はどうなるでしょうか。

FIGURE 4 V1とV3を上方に持ち上げたとき:
H1あるいはH3とV1,V2,V3の相欠きの状況


  この位置関係を図示しましたのが、FIGURE 5 (a) です。
図中の L に注目ください。
これはH1あるいはH2の角材表面の机上からの準位を表します。
この準位LがV1あるいはV3,V2においてはどこに相応するかを図中の(b)に示しています。
図中 (a) からご理解いただけると思います。
(b)の準位Lを一致させて描いたのが、(c)となります。
図中で領域Sと表した空間ができます。
このSの図中において横の長さは、1/3+2/3=1となり角材の肉厚に等しくなります。

FIGURE 5 V1とV3を上方に持ち上げたとき:
V1あるいはV3に対するV3の位置関係


 この領域Sが生成されることが、この飛騨組手の核心となります。
FIGURE 6 をご覧ください。
ここに角材H2を図の左側から横方向に領域Sを通過させて貫通させます。
このH2の断面形状が図中に示されています。
H2は他の5本と断面形状が異なります。
すなわち異なる点は、相欠き深さはが2/3ではなく1/3である点です。
このH2は相欠きのはめ合いを緩みなく強固にするため必要最小の数値1/3にしています。



FIGURE 6 V1とV3を上方に持ち上げた状態でH2を貫通させる

 
 最後に持ち上げていたV1とV2を離せば、H2はV1,V2,V3と相欠きで緩みなく強固にはめ合います。
FIGURE7に示しますように、これで完成です。


FIGURE 7 持ち上げていたV1とV3を離せばH2はV1,V2,V3と相欠きで
緩みなくはめ合い完成です

参照

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ギャラリー
  • Soma cube の解480通りの体系化(その1)
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プロフィール

nonchan

ブログデビューしたてのビギナーです。 定年リタイア後、ルーティンとして週5のウォーキングと週2のスイミングを課してます。 ブログでは、わたし流の生活から派生した事項を載せるつもりです。 まずは、ウォーキング中に撮影した自宅付近の植生の写真を載せます。 趣味の木工も掲載しようかと考えています。