以前飛騨組子を作製し記事  [1] にしましたが、その際に飛騨組子の技法上の原理説明を省きました。
今回は今後のためこの原理の説明を試みます。
難しい話ではないのですが、図面を作るのをさぼっていたためのびてしまいました。

 6本の角材から組む飛騨組子(千鳥格子)は、5本の同一断面形状の角材とそれとは異なる1本の角材形状の角材から構成されます。

角材V1,V3の断面形状は、FIGURE 1 の右側に示しています。
3か所の凹部を持ちます。
この凹部を専門的には相欠きと申します。
この凹部の深さ、すなわち欠き取る深さは角材の板厚の2/3です。
他方 H1, H3の断面形状は、FIGURE 1 の下方に示しています。
これも3か所の相欠きを持ちます。
すぐわかりますように、V1あるいはV3をひっくり返したものです。
また、V1,V3,H1,H3はすべて同一形状であることもわかります。
手順としては、下記となります。 
(1) V1とV3を机上に置きます。
(2) その上にH1とH3を、相欠きを重ねて接ぎます。

 

FIGURE 1 V1,V3の上にH1, H3を置きます


 次にFIGURE 2 をご覧ください。
5本目の角材 V2 を持ってきます。
これは、今までの角材と同一の断面形状です。

(3)このV2をH1,H2の上に相欠きを重ねて接ぎます。



FIGURE 2 V2 を置きます


 FIGURE 3をご覧ください。
この図は、このときのH1またはH3とV1,V2,V3との相欠きの重なりの状況を模式的に示しています。
相欠きの深さがすべて2/3としたため、H1またはH3とV1,V2,V3との相欠きに空き間が形成されていることがご理解いただけますでしょうか。


FIGURE 3 H1あるいはH3とV1,V2,V3の相欠きの状況


  さてこの時にV1とV3を上方に持ち上げた際の状況は、どうなるでしょうか。
FIGURE 4をご覧ください。
V1とV2には上向きの外力が作用し、その他のH1,H2,V2には下向きの重力が作用します。
FIGURE 3で説明しました相欠きの空き空間による効果です。
このときV1またはV3とV2との位置関係はどうなるでしょうか。

FIGURE 4 V1とV3を上方に持ち上げたとき:
H1あるいはH3とV1,V2,V3の相欠きの状況


  この位置関係を図示しましたのが、FIGURE 5 (a) です。
図中の L に注目ください。
これはH1あるいはH2の角材表面の机上からの準位を表します。
この準位LがV1あるいはV3,V2においてはどこに相応するかを図中の(b)に示しています。
図中 (a) からご理解いただけると思います。
(b)の準位Lを一致させて描いたのが、(c)となります。
図中で領域Sと表した空間ができます。
このSの図中において横の長さは、1/3+2/3=1となり角材の肉厚に等しくなります。

FIGURE 5 V1とV3を上方に持ち上げたとき:
V1あるいはV3に対するV3の位置関係


 この領域Sが生成されることが、この飛騨組手の核心となります。
FIGURE 6 をご覧ください。
ここに角材H2を図の左側から横方向に領域Sを通過させて貫通させます。
このH2の断面形状が図中に示されています。
H2は他の5本と断面形状が異なります。
すなわち異なる点は、相欠き深さはが2/3ではなく1/3である点です。
このH2は相欠きのはめ合いを緩みなく強固にするため必要最小の数値1/3にしています。



FIGURE 6 V1とV3を上方に持ち上げた状態でH2を貫通させる

 
 最後に持ち上げていたV1とV2を離せば、H2はV1,V2,V3と相欠きで緩みなく強固にはめ合います。
FIGURE7に示しますように、これで完成です。


FIGURE 7 持ち上げていたV1とV3を離せばH2はV1,V2,V3と相欠きで
緩みなくはめ合い完成です

参照

なお最新の記事も是非とも参考願います。